「忘れないで。それが力に」 輪島塗の職人が作新学院で講演
能登半島地震で被害を受けた石川県の輪島塗の生産者が、宇都宮市の作新学院で小中学生と高校生に特別授業を行った。児童・生徒らは、伝統工芸の復興にかける生産者の思いに触れ、被災地支援について考えを深めた様子だった。【小林祥晃】 【写真で見る】能登地震から3カ月 倒壊したままの街 教壇に立ったのは石川県輪島市の「岡垣漆器店」社長で、国内外で輪島塗の紹介に力を入れている岡垣祐吾さん(44)。作新学院は高校の吹奏楽部が同県珠洲市で演奏会を開催するなど、地震前から能登地域との交流があり、学校を挙げて義援金を募るなど支援を続けている。今回は、同校が「被災地の伝統産業について学びたい」と岡垣さんを招いた。 授業は先月14日に行われ、小学部、中学部、高校でボランティア活動に関心のある児童・生徒約130人が参加した。岡垣さんは、家族と中学校に避難した体験を写真や動画で振り返り、「皆さんが同じような災害に遭った時は、必要な物や欲しい物を、声を上げて外部の人に伝えた方がいい。(つらい)思いはため込まず、言葉にしてほしい」などと率直な思いを語った。 また、輪島塗にはさまざまな工程があり、専門の職人の分業で成り立っていることを説明。地震後、多くの職人が市外に避難したため、以前のような体制で生産ができないことから「(今後は)作業の効率化につながる技術支援が必要だ。ピンチの後には必ずチャンスがやってくると信じている」などと力を込めた。 被災者の肉声に触れた児童・生徒からは「私たちにできる支援は?」「希望を感じることはあるか?」などの質問が相次いだ。岡垣さんが「忘れないでいてほしい。それが力になる」「能登は大昔から地震に見舞われてきた土地。そこで作り続けてきた輪島塗を、未来につなげたい」などと答えると、子どもたちは真剣な表情で聴き入っていた。 中学部2年の石川舞さんは「今までは募金活動に力を入れてきたが、これからは(被災者が)具体的に何を求めているのかを考えた支援をしたい」と感想を話していた。同校は今後も、校内外で被災地への募金を呼びかけていくという。