「あの日、どこでなにしてた?」東日本大震災から13年…津波で亡くなった外国人の足跡を追ったルポタージュ #知り続ける(レビュー)
本書は東日本大震災で被害にあわれた外国人の足跡を丁寧に追ったルポルタージュだ。 毎年3月11日が近づくと「あの日、どこでなにをしていた?」という話が必ず出る。私は地元の税務署に確定申告を出しに行った帰りで、下校途中の小学生たちを線路沿いの開けた場所へ誘導し、そこで電線が大縄跳びのように回っているのを見ていた。 三浦は震災直後に宮城県南三陸町に転勤を命じられ、そこに駐在し取材した日々を朝日新聞に連載。『南三陸日記』(集英社文庫)として後日上梓した。瓦礫に埋もれた町から動き出した人を、目で見て感じて言葉にした。身分保障された新聞記者でなければできない仕事で、イコールそれは三浦にしかできない仕事でもあったと思っている。 被災地取材で培われた人脈と信用によってもたらされた情報があって初めて、本書で紹介されている8人の外国籍犠牲者のひととなりと最期の様子を明らかにすることができたのだ。 あの震災による外国籍犠牲者の数が思いのほか少ないように感じる理由も理解できた。そして亡くなった彼らを哀しむのは同胞だけでなく地元の人たちにもたくさんいることを知った。 東日本大震災関係の取材を続ける一方、かつて駐在したアフリカで、象牙の密輸を追った『牙 アフリカゾウの「密猟組織」を追って』(小学館文庫)や進出した日本企業の社員と現地女性との間に残された子どもについて『太陽の子 日本がアフリカに置き去りにした秘密』(集英社)で明らかにし、高い評価を得ている。 2024年元日にも北陸地方で大震災が起こった。 三浦が明らかにしてきた災害大国日本の現状は、きっと北陸の震災やこれから先の災害の役に立つと信じている。 [レビュアー]東えりか(書評家・HONZ副代表) 千葉県生まれ。書評家。「小説すばる」「週刊新潮」「ミステリマガジン」「読売新聞」ほか各メディアで書評を担当。また、小説以外の優れた書籍を紹介するウェブサイト「HONZ」の副代表を務めている。 協力:新潮社 新潮社 波 Book Bang編集部 新潮社
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