ザックが東アジア杯組を10人も呼んだ理由
同じポジションで高めたい競争
ザックジャパンに大きなメスが入れられた。日本サッカー協会は8日、ウルグアイ代表との国際親善試合(14日@宮城スタジアム)に臨む日本代表メンバー23人を発表。FW本田圭佑(CSKAモスクワ)やFW香川真司(マンチェスター・ユナイテッド)らヨーロッパ組10人に加えて、Jリーガーだけで編成された先の東アジアカップの優勝メンバーからも大量10人が名前を連ねた。 10人の東アジア杯組のうち、西川周作(サンフレッチェ広島)、権田修一(FC東京)の両GKとDF駒野友一(ジュビロ磐田)、MF高橋秀人(FC東京)はザッケローニ体制における常連。残る6人は獲得キャップ数が最高で「3」のいわゆる新顔という構成になっている。 しかも、新顔のメンバーにはある「共通項」がある。DF森重真人(FC東京)はDF今野泰幸(ガンバ大阪)、MF青山敏弘(サンフレッチェ広島)はMF遠藤保仁(ガンバ大阪)、MF山口螢(セレッソ大阪)はMF長谷部誠(ヴォルフスブルク)、FW工藤壮人(柏レイソル)はFW岡崎慎司(マインツ)といった具合に、同じポジション、同じ役割の選手が常連組でも招集されていることだ。
東京・文京区のJFAハウスで記者会見に臨んだアルベルト・ザッケローニ監督は、ウルグアイ戦以降のチーム作りについてこう言及している。 「これまでいくつかのステージを設け、その都度、目標を設定してきた。まずはW杯アジア予選を突破し、そのチームでコンフェデレーションズカップを戦う。ここまでは結果を求められる戦いだったが、本大会までの1年間はいかにいい準備ができるかという新しいステージに入る。もちろん結果も求められるが、最大の目的はエネルギーに満ちあふれた力強い日本代表チームを作り上げること。相手に(戦い方を)読まれない、意外性のあるチームを作ってきたい」 W杯アジア3次予選が始まった2011年9月からメンバーをほぼ固定して戦ってきたザックジャパンには、結果を残してきた一方で閉塞感やマンネリ感も漂っていた。しかし、ザックは、4-2-3-1のシステム、リスクを負ってでも高いラインをキープして攻撃にこだわるというサッカーのベースを崩す気はない。ただ、『左で崩して右で決める』というワンパターンから脱皮は考えているようである。そのためにも、4-2-3-1のポジション、ポジションの競争力を高め、主軸を担ってきた選手たちの危機感を煽り、そのことによって起きる劇的な化学反応に期待しているのだろう。今回、東アジア杯組で及第点のプレーを見せた選手たちの中からあえてポジションが重なる選手を選んだのは、そういうメッセージに違いない。 ゆえに東アジア杯組に対しては、これまで批判を受けていたように「呼んでおいて使わない」というようなことはしない。ザッケローニ監督が続ける。 「彼らは東アジアカップの前からいいパフォーマンスを演じていて、終了後もJリーグを視察したスタッフからいいレポートが入ってきた。例えば青山は短期合宿に呼んだこともあるし、個人的にはずっと気に入っている選手。この3年間、ずっと見てきた選手の一人だ。新しい選手は相対的に、まずは手元に置いて、段階を踏んで試合で使ってきたい。大切なのは常連組と3日間過ごすこと。トレーニングの中で彼らとどう絡んでいくか。非常に結束の固い代表チームの空気を吸って、その中に入ってきてほしい」