米利下げに備える市場、円キャリー取引やアジア新興国への影響を警戒
(ブルームバーグ): 今週の米連邦公開市場委員会(FOMC)の決定を受けて円相場が上昇した場合、新興国市場の投資家を動揺させ、8月の世界的なボラティリティー上昇を想起させる可能性がある。
日本銀行の利上げに伴う先月の円急伸は、新興国通貨のキャリートレードに大きな打撃を与えたほか、日経平均株価の史上最大の下げ幅更新につながった。 これに予想を下回る米雇用統計が重なり、シカゴ・オプション取引所(CBOE)のボラティリティー指数(VIX)が急上昇したほか、大型テクノロジー株で構成するナスダック100指数は、月初のパフォーマンスとして2008年以来の最悪となった。
今回も類似点がある。米金融当局が0.25ポイント利下げで金融緩和を開始するのか、それともより大幅な利下げに踏み切るかを巡り、投資家の見方は分かれている。0.5ポイント利下げは米経済の健全性に対する疑念を生み、アジアの新興国資産の売りを招きかねない。また、円高が一段と進行し、円を調達通貨とするキャリー取引のポジション巻き戻しにつながる可能性もある。
一方、0.25ポイント利下げは株式市場に有利に働く可能性があり、比較的小規模な東南アジアの市場が主に恩恵を受ける公算が大きい。
円相場に注目
円相場の動向は、米利下げを巡る予想と密接な関係がある。0.5ポイント利下げ観測が強まる中、円相場は16日に対ドルで上昇し、139円台に突入した。
これは日本の投資家を動揺させた。米利下げ幅が大きくなればなるほど円高は加速し、日本の輸出企業の利益を圧迫する可能性があるためだ。トレーダーやヘッジファンド、機関投資家にとって、日銀の利上げに伴う先月の円急伸を受けて、世界的に市場で売りが相次いだことは記憶に新しい。
FOMCの金利決定後、注目は19、20日開催の日銀金融政策決定会合に移るだろう。大半のエコノミストは金融政策据え置きを予想しているが、投資家は12月の追加利上げの可能性を示唆するシグナルが発せられるか注視する見通しだ。