「コヒナ」がサザビーリーグに合流した理由 “D2C”の枠を超え「小柄女性の一生に寄り添う」
WWD:改善余地の一方で、「コヒナ」ならではユニークネスもあるはず。大手のサザビーリーグに参画することで、そういった「尖り」が失われてしまう可能性もあるのではないか。
帰山:ブランドの“個”を立たせることにおいては、僕たちの右に出るものはないという自負がある。熱意を持った現場の人間が花開く土壌は、鈴木陸三(創業社長)の時代から耕してきた。店の看板を外して、商品のタグを取ってみた。そうしたら、どこの服から分からないというようなブランドにしてしまったら、(「コヒナ」)が当社の仲間になった意味がない。感覚的なニュアンスではあるが、中で働く人も作るモノも、「コヒナっぽさ」が常にあるようにしたい。
「コヒナ」は“小柄女性のため”というパーパスに向き合い、研究を重ねてきていることがよく分かる。パターンやデザインについて技術者と話していると「なるほど」と思う部分が多い。通常のアパレルの、S、M、Lとサイズをグレーディングして対応するのとは一味違う、小柄女性のための気遣いやディテールが息づいている。これは絶対に殺しちゃいけない部分。当社のアパレル経験値の豊かな人間から見て、「コヒナ」の役に立ち、“らしさ”と折り合いがつけられる仕組みがあるなら取り入れればいい。ただ、「郷に入ったら郷に従え」というつもりは全くない。熱量の矛先や進むべき道に向かってハンドリングし、応援するのがわれわれの役目だ。
田中:今回パートナー探しをするにあたって手を挙げてくださった会社はたくさんあった。だが、サザビーリーグがいい意味で一番“ブランド任せ”だった。これからも、私たちが進みたい方向に進んでいけると感じた。
WWD:サザビーリーグ加入に際し、「コヒナ」のメンバーからの反応は?
田中:もちろんびっくりしたとは思うが、ポジティブな反応が大きかった。メンバーにはサザビーリーグのブランドのファンも多く、10年後、30年後と続いていくブランドのビジョンはより鮮明になったのではないかと思う。私たち低身長は、ずっと低身長として生きていく。だからこそ、自分たちと同じ個性と悩みを持ったお客さまに、一生寄り添い続けることが大事だと思っている。たとえ歳を重ねておばあちゃんになったとしても、「コヒナ」があれば一生困らないと思ってもらえるブランドにしたい。だから、(サザビーリーグへの加入で)ブランドの足腰をしっかりさせることは、お客さまへの誠意であるとも感じている。