「コヒナ」がサザビーリーグに合流した理由 “D2C”の枠を超え「小柄女性の一生に寄り添う」
リミッターを外したモノ作り
固定観念なく挑戦
WWD:実店舗の出店に関しては。
帰山:例えば(「アナイ」のように全国に数十店舗を出していくようなビジネスモデルは描いていない。「メゾンスペシャル(MAISON SPECIAL)」のように、「EC」「ハイトラフィックな立地重視の店舗」「世界観を発信する路面店」という役割を明確化した販路戦略はモデルケースになりうる。まだ会社のボードメンバーで話している最中ではあるが、数でいえば「10店舗」は1つの指標になる。常設店という形にとらわれず、小さな面積でもお客さまと接する場を積極的に設けていく。
田中:まだコロナ禍の最中の21年に、在庫を持たない試着専門店を表参道で運営していた。毎週のように通ってくださるお客さまもいて、最終日は雨の中だったが長い並び列ができた。スタッフと手を取り合って泣いているようなお客さまもいた。実店舗は、お客さまとのつながりを感じられる場にしたい。商品ラインアップも再構築の必要がある。常設店を構えるなら、在庫を最小限にしてキャッシュアウトを抑えるという、ECベースのやり方では通用しない部分がある。これまでも在庫を抑えたがゆえに人気商品が不足し、お客さまの元に届けきれないということもあった。現在は渋谷ヒカリエで半年間のポップアップストアを実施しており、そこでの店頭動向も参考にしたい。
WWD:D2Cブランドのブームは一巡したとも言われているが。
田中:D2Cという画一的な呼び方は、その必要性とともになくなっていくのではないだろうか。ECを含め、ブランドがお客さまに「何をどう届けるか?」という形が多様化していく過程で、無理やりカテゴライズするためのワードだったのだろう。店舗を持たずオンライン専業でやるという意味が“D2C”なら、私たちはこれを機にそうじゃなくなる。
帰山:お客さまの満足を維持するため、ブランドは時代に合わせた変化も必要になる。逆に「ロンハーマン」はネット販売をしない姿勢をずっと保ってきたが、コロナ禍で環境が変化する中で自社ECを始めるという決断をした。
田中:「小柄女性のための」というところは絶対にぶれないが、それ以外は固定観念なく変えていいと思っている。特に、デザインや質のアップグレードは絶対にやりたい。やはりサザビーリーグはクリエイティブでモノ作りに強い会社で、そういう部分は私たちがまだまだ至らないところ。目の肥えたお客さまに向けた、これまでオンラインだけでは伝えきれなかったモノ作りにも、リミッターを外して挑戦していきたい。