新型アストンマーティン・ヴァンテージに、ガマンは不要だ! 日本上陸した2000万円超のスーパースポーツに迫る
ショートホイールベースゆえの軽快さ
しかし、日本にやってきたヴァンテージに試乗して驚いた。ラグジュアリーなDB12に匹敵するとはいわないけれど、国際試乗会で乗ったヴァンテージとは別物の快適性で、これだったらガマンは不要。それどころか、ウェット、スポーツ、スポーツ+、トラックなどが用意されるドライビングモードのうち、ウェットやスポーツはもちろん、スポーツ+でさえガマンとは無縁の快適な乗り心地で、公道でも幅広い走りが満喫できそうな気配を漂わせていていたのだ。 こうなると、改めて見直したくなるのがショートホイールベースゆえの軽快さで、記憶のなかにあるDB12とは段違いのステアリングレスポンス、それにコーナリング時に軽々とノーズの向きを変える特性がはっきりと意識されるようになる。 そしていまさらながら、スペインのサーキットで体験した俊敏な反応と、テールが流れ始めてもカンターステアで的確に修正できるコントロール性の高さが、このショートホイールベースゆえに実現できたという事実を思い知ったのである。 先ほど“快適”と、評価した乗り心地にしても、ショートホイールベースがボディーの高剛性化には有利で、これが足回りに加わった衝撃をしっかりと受けとめるのに役立っていたことが理解できるようになる。DB12からリヤシートを取り去った効果は、間違いなくあったのだ。 いっぽうで、たとえ狭くてもリアシートがあるとハンドバッグやコートなどを手軽に置けて便利だが、ヴァンテージのフロントシート後方には、人は乗れなくても小物程度なら置けるスペースが用意されているので、その点でもあまり不自由はしないだろう。 したがって、あとはグランドトゥアラーの優雅な快適性をとるか、スポーツカーの俊敏なハンドリングをとるかで、DB12とヴァンテージのどちらを選ぶかが決まりそうである。 ちなみに、価格はDB12が¥30,900,000でヴァンテージが¥26,900,000と、差額は¥4,000,000だ。
文・大谷達也 写真・小塚大樹 編集・稲垣邦康(GQ)