プリン体0ビールは尿酸値が高い人に有効なの?【管理栄養士が解説】
近年、さまざまなアルコール飲料メーカーがプリン体0のビールを発売しています。「尿酸値が高い人はプリン体の摂りすぎに気をつける」という認識は定着しつつありますが、プリン体0のビールは効果的であるといえるのでしょうか?この記事では、プリン体0のビールは尿酸値が高い人に有効なのか、管理栄養士が解説します。プリン体0のビールに変えようか迷っている方は、ぜひ参考にしてくださいね。 〈写真〉プリン体0ビールは尿酸値が高い人に有効なの? ■そもそもプリン体ってなに? プリン体とは、細胞の核に存在する核酸の主成分です。遺伝情報をもつDNAも核酸のひとつ。そのため、量に違いはありますが、プリン体はほとんどの食品に含まれています。さらに体内では、新陳代謝により私たち自身の細胞からもプリン体が作り出されています。 プリン体は肝臓で代謝されて尿酸に変わり、体の外に排出されるため、通常は健康に影響を及ぼすことはありません。しかし、尿酸は多くなりすぎると血液中にたまり、高尿酸血症を起こします。高尿酸血症の状態が続くと尿酸が結晶化して体内に沈着し、さまざまな障害や病気を引き起こします。 高尿酸血症が原因となる病気のひとつが痛風です。痛風では、尿酸の結晶が関節に沈着し、白血球がその結晶を壊そうと働くことで痛みや腫れが生じます。また、結晶が尿管に詰まると尿路結石になり、腎臓に沈着した場合は腎障害が起こることがあります。 ■ビールはプリン体が多いって本当? 「プリン体0」を謳った商品が販売されているほどなので、「ビールはプリン体が多いのでは?」と思うでしょう。たしかに、お酒のなかで比較するとビールはプリン体が多いといえます。主なお酒100mlあたりに含まれるプリン体の量を比較すると、次のようになります。 ビール:3~7mg 日本酒:1.2mg ワイン:0.4mg ウイスキー:0.1mg 焼酎:0mg ビールに含まれるプリン体は、原料の麦芽に由来します。近年人気が高まっているクラフトビールでは、100mlあたり10mg以上のプリン体を含んでいるものもあります。一般的なビールよりもプリン体の量が多いのは、麦芽の使用量が多いことが理由です。 ただし、プリン体が少ないお酒やプリン体0のビールを選べば大丈夫、とは言い切れません。なぜなら、アルコールそのものが尿酸値を上げる要因になるためです。 アルコールは、体のエネルギー源であるATPという物質の分解を進めます。ATPが分解されるとプリン体が生じるため、ビールに限らずアルコールを摂取するとプリン体が増えやすくなるといえます。さらに、アルコールには腎臓での尿酸の排出を抑制する作用もあることから、尿酸値が高い方は種類を問わずお酒の摂取自体を控えるべきでしょう。 ■尿酸値を上げないポイント 尿酸値が気になる人は、次のポイントに気をつけて生活しましょう。 ・プリン体が多い食品の摂取を控える ・野菜や果物、豆類、全粒穀類などをバランスよく取り入れる ・水分を多く摂る ・甘い飲み物の摂取を控える ・お酒の摂取を控える ・ウォーキングなどの軽い有酸素運動に取り組む ・肥満を予防、解消する プリン体はレバーや白子、イワシやアジなどの干物に豊富で、肉類にも多く含まれています。尿酸値が気になる方は、これらの食品を食べすぎないようにしましょう。 野菜や果物、豆類、玄米や雑穀などの全粒穀類には、尿をアルカリ化して尿酸の排出を促す作用があります。また、水分を多く摂ると尿量が増えて尿酸の排出が促されます。しかし、甘い飲み物に含まれる糖質には尿酸値を上げる作用があるため、水分補給での利用を避けましょう。 肥満の方は体内でプリン体が作られやすいうえに、尿酸の排出が抑制されやすくなります。そのため尿酸値が高くなる傾向があるので、肥満の方は減量に努めることが大切です。 尿酸値が高い方にとって、プリン体0のビールはお酒を楽しみたいときの有効な選択肢のひとつになります。しかし、アルコール自体に尿酸値を上げる作用があるため、プリン体0のビールであっても飲みすぎないように注意してください。 【参考文献】 厚生労働省 e-ヘルスネット「プリン体」 厚生労働省 e-ヘルスネット「高尿酸血症」 厚生労働省 e-ヘルスネット「アルコールと高尿酸血症・痛風」 厚生労働省 e-ヘルスネット「高尿酸血症の食事」 公益財団法人 痛風・尿酸財団「食品・飲料中のプリン体含有量」 ライター/いしもとめぐみ(管理栄養士)
いしもとめぐみ