【広島好き】坂倉将吾が後半戦最初のカードで示したもの 打撃改造の転換は新たな冒険の始まり
「自分が冒険すると決めて、冒険したのに結末がこうなってしまった。でも、やってきたことも、この先に生きると思う」
1軍に定着し始めた3、4年目の感覚を思い出しながら、思い切って打法を変えた。当時と今では積んだ経験も、身に付けた技術も違う。徐々に打撃の感覚が上がっていくのが分かった。
成績が振るわない中で監督推薦によって出場した球宴も大きなきっかけとなった。人見知りするタイプだが「侍(ジャパン)に選ばれたことで今年は前回よりもいろいろ話せる人が多くなりました。左バッターの人とたくさん話をさせてもらったし、収穫は多かった」と笑顔でチームに帰ってきた。セ・リーグで首位打者争いする巨人丸やパ・リーグで3冠王も狙えるソフトバンク近藤などそうそうたるスラッガー相手に“聞き魔”と化した。
7月20日の球宴2戦目では球宴57年ぶり、セ・リーグ初の満塁ホームランという、思わぬ記録もつくった。そして迎えた後半戦最初のカードで結果がついてきた。感覚だけでなく、もう数字も気にしない。「数字は落ちるところまで落ちたので、自分がどうバッティングしていくか。ここから上げられる数字は限度があるので、数字よりも来年、再来年、自分がどういうバッターで、どういうバッティングをしないといけないのか。そういうものを探したい」。
首脳陣が前半戦、坂倉に打席を与えてきたのは、後半戦や来季以降への投資の意味合いが強かった。思ったよりも時間と打席数を要したが、苦しみ、悩み、そしてはい上がった。坂倉にとって、本当の戦いはここからだ。
文:前原淳
前原淳