「中国の車でしょ」と侮るべからず!業界の勢力図を塗り替えるBYD シールの実力
BYD シールは、あのとき、ヨーロッパのホテルで見たLGのテレビと重なる。性能には問題がないどころか素晴らしいし、デザイン責任者のヴォルフガング・エッガーが手掛けた造形は、彼の傑作であるアルファ・ロメオ8Cを彷彿させる。 まさか、ですよね。車が液晶テレビと同じ轍を踏むとは思えないし、思いたくない。でもあのとき、“世界の亀山”ブランドが負けちゃうなんて、誰ひとりとして思っていなかったのだ。
“夢の実現”への試金石
BYDは、「Build Your Dream(=夢を築こう)」の略。世界最大のマーケットを擁する中国メジャーにとって、日本市場などビジネス的にはさほど旨みはないはず。 それでもアグレッシブに店舗展開しプロダクトを導入するということは、世界一の自動車メーカーを目指すという“夢の実現”に向けて、日本市場での一定の成功が重要だと彼らが思っているからだろう。 4ドアサルーンのシール、日本でいえばスカイラインサイズのBEVだ。後輪駆動と4WDを用意するが、ステアリングフィールや乗り心地全般など前者のほうがしっくりきた。 内外装デザインの上手さにも驚く。ラグジュアリーではないが、上等なツールに見える。新しさを奇異に映らない程度にちりばめてユーザー満足度を高める手法をBYDは早くも掴んだ。 デザインチームのボスにヴォルフガング・エッガーがいるのだから当然か。 短時間の試乗で思ったことは「これで十二分」と思わせるだけの力量は既に日本車レベル、というか、場合によってはそれを超えているということ。 日本がBEVだICEVだと不毛な議論をやっているうちに“静かに”スイスイっと追い越されてしまったようだ。
OCEANS編集部