2部降格、ケガでの出遅れ…それでも再び輝き始めた橋岡大樹。ルートン、日本代表で見せつける3-4-2-1への自信
「CBもできるし、WBはもっとできる」
11月1日に行われたWBA戦では、3-4-2-1の右ウイングバック(WB)として出場した。橋岡はこれまで3バック一角のセンターバック(CB)として出場することが多かったが、ルートンでの希望ポジションはこの右WBである。 同位置での出場は、チーム事情により急遽チャンスがまわってきた。左WBのレギュラー選手が累積警告で欠場となり、これまで右WBを務めていた選手が左サイドに移った。その空いた右WBに橋岡が入った格好だ。 このチャンスを逃すまいと、サムライ戦士はピッチを走りまわった。攻撃参加時は高い位置まで駆け上がり、守備時は最終ラインまで戻ってゴールを守った。試合後は、ロブ・エドワーズ監督からも褒められたという。 「これまでずっとCBで出ていたので、やっとWBでプレーできた。自分本来のプレーができたかなと。監督からも『よくやった』と言われました。 今日の試合でこのチャンスをつかめなかったら、またWBはやらせてもらえないと思う。結果として、『CBもできるし、WBはもっとできる』と思ってもらえたはず。ファーストチョイスはWBで、CBでもプレーできると」 1-1で迎えた試合終盤には、橋岡に決定的な得点チャンスが訪れた。左コーナーキックに日本代表がニアサイドに飛び込み、ドンピシャのタイミングで強烈なヘディングシュートを放った。しかしポストを直撃しゴールならず──。 決まっていれば決勝弾となってチームを勝利に導いていたが、試合はそのまま1-1のドローで終わった。「惜しかったですね?」と聞いてみると、橋岡は「そうですねぇ」と悔しそうな表情を見せる。「決まっていれば完璧でした。そこがまだちょっと足りないところ。ただ、あそこを毎回狙ってくれれば、自分は絶対に当てられる。もっと多くボールが欲しいですね」と続け、今後もセットプレーから果敢にゴールを狙いたいと意欲を示した。
「プレミアとチャンピオンシップは違う」
橋岡が身を置くチャンピオンシップは、2部リーグならではの厳しさがある。国内リーグ戦は、全24クラブからなるトータル46試合の長丁場。20クラブ、38試合制のプレミアリーグよりも試合数が多い。 2部の1~2位がプレミアに自動昇格となり、3~6位に入った4クラブが残りの1枠をかけて昇格プレーオフを戦う。経営規模の小さい僻地のクラブもあって、ホーム&アウェイの移動距離が長く、体力的にも精神的にも過酷なリーグである。 しかも、ルートンは現在21位で降格圏付近に低迷している。エドワーズ監督へのプレッシャーも高まっているが、橋岡は「一回波に乗ればいけるチーム。良い選手も結構いるので、そこはまだ大丈夫。あと30試合ぐらいありますから、まだまだいけると思っています」と語り、長丁場だからこそ昇格のチャンスはあると力を込めた。そして、今季の展望についてこう言葉を続ける。 「もちろん1位、2位に入りたいですけど、(プレーオフ出場権が入る)6位までに入れば、プレミアに上がるチャンスはある。ただ、プレーオフでシーズンが長くなるだけなので、やはり1位、2位を狙いたいです」 ――チャンピオンシップの印象は? WBA戦も終盤はロングボールが目立ちました。 「レベルは高いと思いますが、やっぱりプレミアとチャンピオンシップは違う。ロングボールが多いですよね。今日の終盤もそうでした。肉弾戦みたいになるので、体がより大きくなる。この強度にも慣れると思います」 昨季に比べると、橋岡は体が一回り大きくなった。ユニホーム姿を見ると、特に上半身がパワーアップしているのが分かる。サムライ戦士は言う。 「みんなからも『体がデカくなったな』と言われますね。チームの筋トレが毎日のようにあって。こなしていたら自然とデカくなりました」 自分で意識して体を大きくしたわけではなく、チームで課せられた筋トレメニューをこなしているうちに体が大きく仕上がったという。そのおかげで、WBA戦でも空中戦で競り負けることはなかった。 今季のチャンピオンシップでは、リーズの田中碧やブリストルの平河悠、ブラックバーンの大橋祐紀、QPRの斉藤光毅など、日本人選手が数多くプレーするようになった。「また違った意味で刺激になっているのでは?」と聞いてみると、橋岡は次のように返す。 「主力でやってる人は意外と少ない。今、田中碧選手が主力になり始めたところですが、チームで絶対に欠かせない存在にならないといけない。『あの日本人いいな』というふうに思われるようになれば、他の日本人選手もここに来やすくなるはず。自分もここで力を示していきたいと思ってます」