「稼げるハイブリッド車」が握るホンダの未来、脱「低収益の4輪事業」でEV離陸までの橋渡し
この苦しい時期に投入されたのがe:HEVだ。コスト改善によって北米などでもHVモデルを次々と投入できるようになった。市場でHVの人気に火がつき、半導体不足の解消で増産が可能になったことも重なり、足元ではHVモデルが5割を占める車種も出てきた。 結果、4輪事業の営業利益率は2024年3月期に4.1%、さらに2024年4~6月期には6.4%へと急浮上している。「HVを含むエンジン車の営業利益率は8%レベルまできている」と藤村CFOは手応えを語る。
■課題山積みのEV 一方、新たな課題も出てきた。 2040年に脱エンジンを掲げるホンダ。将来的なEVシフトへの前向きな姿勢は日本メーカーでも群を抜く。だが、皮肉なことにEVでは日本勢の中でもほとんど存在感を示せていない。 ホンダにとって初の量産型EVである「ホンダe」は目標販売台数に遠く及ばないまま2024年1月に生産を終了。ゼネラル・モーターズ(GM)と共同開発するはずだった量販価格帯の中小型EVについては、商品性や価格を含めた製品の着地点が見いだせずに計画は白紙になった。
中国で投入したEVシリーズは中国勢に太刀打ちできず、鳴かず飛ばずの状況が続く。あるホンダ系部品メーカーの首脳は「HVを含めたエンジン車が売れるのはいいが、今後の主力としているEVが本当に売れるのかが重要だ」と不安げに語る。 電池のコストが重いEVで利益を出せているのはテスラや中国・BYDといったごく一部に限られる。そもそもホンダの場合、開発費をかけたEVが売れてもいない。HVを含むエンジン車で8%台と実際の営業利益率の差はEVのマイナスが大きく影響していると見ていい。
「EVは2020年代後半が勝負になる」。ホンダ経営陣はEVの販売競争はこれから佳境になると繰り返している。 その勝負どころに向けて、車体技術の新工法「メガキャスト」の導入、全固体電池やEV専用のソフトウェア基盤の開発を進めている。2026年以降には「ホンダ0(ゼロ)」シリーズなど新技術を採用するモデルが立ち上がってくる。ゼロシリーズでは商流の見直しも含めて電池の調達コスト20%削減、自動化や部品集約で生産コストを35%削減(ともに現状比)することを目指している。