NPBファームに新規参戦の「くふうハヤテ」。大手企業を退職し就任した球団社長が語る「ゼロからの立ち上げ」
グループのミッションは「挑戦者を支え、挑戦者を増やし、挑戦者になることで、社会の温度を上げる」。NPB新規参戦というスポーツ事業も、そんな新たな挑戦のひとつだった。 「100パーセントお任せではなく、話はざっくばらんに聞いてくださいますし、現場に口出しもしません。『そこは自分ではわからないから』と。杉原オーナーにはもともと、コロナ禍のときに『スポーツで日本を元気にしたい』という思いがあった。スポーツチームの運営については、JリーグやBリーグなどからも相談があったそうですが、そこに『NPBの野球振興』というお話が飛び込んできた。『こんなチャンスがあるのか、ぜひ挑戦したい』と話を受けたと聞いています」 ■球団を消滅させてしまった過去の後悔 新球団誕生までの経緯を要約して紹介したい。静岡市ではもともと、2011年に初当選した田辺信宏前市長が球団誘致の活動を続けていた。一方で、NPBはプロ野球の発展と新規ファン獲得を目指し、2022年7月からファーム・リーグ拡大構想の検討を重ねていた。両者の思惑は一致し、杉原氏のもとに話が舞い込み具体化していった。 新球団公募に対して、熊本に本拠を置く火の国サラマンダーズが早々に申請表明したが、資金調達の困難を理由に撤退。宇都宮市を拠点にする栃木ゴールデンブレーブスも申請表明したが審査で見送られた。そして2023年11月22日に開かれたプロ野球オーナー会議で、新潟アルビレックスBCとくふうハヤテの2球団が承認された。 NPBの球団増は、12球団制となった1958年以来66年ぶり。ちなみにファーム・リーグのみの参戦では、過去に「山陽クラウンズ」(1950年創設、1952年解散)という球団が存在した。 「新球団を立ち上げる経験はなかなかできない。社長を引き受けたもうひとつの理由としては、過去に球団を消滅させてしまった後悔もありました。当時やりきれなかった部分や反省も踏まえて、もう一度挑戦したい。ゴルフ用品メーカーの社員として働きつつ、そういう気持ちはずっと持ち続けていました。 妻には、話があればいつか挑戦したいとは伝えていました。でも予想以上にその時が早く来たので、ものすごく悩みました。週末の休みはほぼなくなるし、生活も不規則になる。妻が反対したらさすがにやめようと思っていました。でも反対されませんでした。大歓迎ではなかったですが(笑)」