セレブ債券王リーチ氏を訴追、SECも提訴-得意客のトレード優遇か
(ブルームバーグ): 債券に特化した米資産運用会社ウエスタン・アセット・マネジメントで共同最高投資責任者(CIO)を務め、今年に入り休職扱いになったケネス・リーチ氏が「チェリーピッキング」と呼ばれるスキームに関与した疑惑を捜査していたマンハッタンのニューヨーク州南部地区連邦地検は、同氏の訴追手続きを開始した。
スタートレーダーとして活躍したリーチ氏(70)は、パフォーマンスが良いトレードを不適切に得意客に割り当て優遇する一方、パフォーマンスの悪いトレードを他のポートフォリオに振り向けたと指摘された。米証券取引委員会(SEC)もマンハッタンの連邦裁判所に同氏を民事提訴する劇的な展開となった。
米司法省とSECの25日の発表によれば、市場で苦境に立たされ、評判を支える圧力にさらされたリーチ氏は、最も収入を生む口座に勝てるトレードを日常的に割り当てた。リーチ氏は会社の利益の約半分を現金ボーナスとして受け取り、この不可解な手法を通じて私腹を肥やした可能性があるという。
リーチ氏の看板商品である「マクロ・オポチュニティーズ」ストラテジーの顧客にとって、好スタートを切ったトレードはその後も増え続け、3年足らずで6億ドル(現在の為替レートで約923億ドル)の初日のリターンを生んだとされる。負け組と考えられるのは「コア」と「コア・プラス」という他の二つのストラテジーだ。
「統計的に見て、このような差異が初日のリターンで偶然起きる確率は1兆分の1未満だ」とSECは主張した。
リーチ氏の代理人の弁護士は、検察とSECの訴えは「事実無根」と反論し、依頼人は常に適切に行動しており、積極的に争う構えだと述べた。
フランクリン・リソーシズ傘下のウエスタン・アセットの広報担当者は、調査および捜査当局に協力しているとコメントした。
民事提訴ないし強制措置の可能性を事前に警告する「ウェルズノーティス」をSECから受け取ったリーチ氏が、直ちに休職扱いになるとウエスタン・アセットが今年8月に公表し、チェリーピッキングが連邦地検の刑事捜査の対象だと関係者は当時証言していた。