数年前、夫が亡くなり相続した自宅。住みながら子どもに譲りたいけど、生前贈与になる?
負担付き贈与の注意点
負担付き贈与の場合は、負債を除いた評価額に課税されます。 通常の贈与の場合、「もらったほう」が贈与税を納付して終了しますが、負担付き贈与の場合は、贈与する側も負担額で財産を贈与することになるので、負担額が財産の評価額より大きい場合は譲渡益が生じるため、贈与するほうにも譲渡所得の申告が必要です。 相続税や贈与税を計算する際、土地家屋の評価が必要です。土地は路線価方式、路線価がないところは倍率方式(固定試算税評価額×倍率)で評価します。路線価等は、地価公示価格等を基にした価格の80%程度をめどに定められています。家屋は、固定資産税評価額×1.0で計算するため、固定資産税評価額と同じです。 ところが、負担付き贈与や個人間の対価を伴う取引により取得した土地家屋の贈与税を計算する場合は、通常の取引価格、つまり時価により評価します。 財産の評価額と負債が同程度であれば、それぞれの納税額が少なくて済みますが、同じ自宅をもらっても、相続や遺贈でもらう場合と比較して、負担付き贈与では評価額が高くなり、軽減措置もありません。 それでも、相続時の基礎控除額に納まるようなら、相続時精算課税を利用するのもひとつの方法です。基礎控除額を超える場合、同居により生活費を軽減できるのでしたら、相続によることも考えてはいかがでしょうか。 (注:贈与の場合は不動産取得税3%がかかり、登録免許税は2%(相続は0.4%)かかります) ところで、令和2年4月1日以降、夫婦の片方が亡くなった場合に、これまで住んでいた家に残された配偶者が無償で住み続けられる制度「配偶者居住権」が施行されました。 これにより、家屋の所有権は子が相続しても、配偶者は住む場所を確保できます。A子さんの相続は施行される前で利用はできなかったのですが、当時に制度があれば生活の心配はなかったかもしれません。 ただし、 ●固定資産税は所有権者が納税しますが、配偶者居住権者は建物の通常の必要費を負担することとされているため、所有権者は配偶者居住権者に請求できること ●配偶者居住権を登記すれば第三者に対抗できますが、抵当権が実行される場合は明け渡し請求に対抗できないこと 以上のことに十分注意しましょう。 出典 国税庁 令和5年度 相続税及び贈与税の税制改正のあらまし 国税庁 No.4426 負担付き贈与に対する課税 国税庁 No.4602 土地家屋の評価 国税庁 相続開始の年に被相続人から贈与を受けた宅地に係る小規模宅地等の特例の適用の可否 国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例) 国税庁 No.4158 配偶者の税額の軽減 国税庁 令和5年分の路線価等について 法務省 残された配偶者の居住権を保護するための方策が新設されます。 法務省 配偶者の居住権を法律上保護するための方策等 国税庁 No.7191 登録免除税の税額表 総務省 不動産取得税 執筆者:林智慮 CFP(R)認定者
ファイナンシャルフィールド編集部