数年前、夫が亡くなり相続した自宅。住みながら子どもに譲りたいけど、生前贈与になる?
A子さんは亡くなった夫から自宅を相続しました。その時は“ひとりでもなんとかなる”と思っていたそうですが、まだローンの残りがあるし、光熱費や固定資産税も遺族年金だけでは大変になってきたそう。とはいえ、「ここには住んでいたいので、同居を条件に子どもに譲渡したいのですが、これは生前贈与になりますか?」とのご相談です。
生前贈与のメリットとデメリット
自分の相続が発生したら子どもが相続するので、今から贈与しておいて、固定資産税や住宅ローンの負担も譲りたいと考えているA子さん。 A子さんが生きているうちに、お子さまに財産を贈与すれば生前贈与です。 贈与の方法には、暦年課税と相続時精算課税があります。 相続時精算課税は、特定贈与者ごとに、1年間110万円の基礎控除額を引いた残りを贈与財産とし、2500万円を超えた額に20%の課税がされます。2500万円を超えなければ贈与税はかかりません(令和6年1月1日より前の相続時精算課税による贈与には、110万円の基礎控除はありません)。 相続が発生した時に、贈与時の評価額でその他の相続財産に加算して精算します。もし、相続財産の合計が基礎控除(3000万円+600万×相続人の数)以下であれば、相続税もかかりません。 一方、暦年課税は、1年間の受贈額が110万円を控除して残った額に、累進税率をかけて贈与税額を計算します。ただし、相続が発生したら、相続開始前7年間(令和6年1月1日前の贈与は3年間)、暦年贈与で受け取った財産を相続税の課税価格に加算しなければなりません(その際、3年以内に贈与された以外の財産の合計から、100万円を控除します)。 ところで、相続や遺贈で被相続人の住宅を取得するときは、被相続人と同居していたなど一定の要件を満たす場合、評価額が80%減額できます(小規模宅地等の特例)。
しかし、生前贈与の場合は適用されません。もし、贈与して年内に相続が発生しても、小規模宅地の特例は使えません。相続時精算課税で贈与する場合も同様です。