23人の医師が退職…“学閥”というしがらみを乗り越えた市民病院のいま
地域の信頼を取り戻せ! “待つ”から“攻める”病院へ
医療スタッフが一丸となり、再生に向けて奮闘する市民病院。しかし、これまでのさまざまな問題は、病院経営を圧迫していた。医師の大量退職問題を受けて、過去最大の赤字となった一昨年度に比べると、昨年度はわずかに持ち直したものの、厳しい状況は続いている。 さらにコロナが5類に移行し、補助金が縮小。県内唯一の「第一種感染症指定医療機関」であり、コロナへの対応に積極的だった分、その反動が大きく出てしまったのだ。
河内明宏さん(京都府立医科大学卒)は、一連の問題の後、理事長に就任。この2年間、日野さんと病院の立て直しに尽力してきた。河内さんは、「“地域に出ていく病院” “地域に開かれた病院”を目指す。この病院は、一時危機に陥った。ずっと待っていても患者は来ない」と話す。
地域に出ていく改革の一つが、消防の要請を受けて出動するドクターカーだ。救急車の主な目的は現場からの搬送だが、ドクターカーは現場ですぐに治療することができる。 ドクターカーに乗る救急診療科・集中治療部の診療部長、千葉玲哉さん(40歳 大阪大学卒)は、「病院に来る前の10~20分でも早く対処するのがドクターカーの仕事」と話す。 千葉さんは大阪大学出身だが、医局には属していない。「『白い巨塔』のような体質が残っている。権力抗争に関わりたくない。一人の医者として、目の前に来る患者を助けたい」。 院長の日野さんについても、「僕らの原点“医療にまっすぐ”を実践するのはすごいこと。僕らも人間なのでなかなか難しいが、院長はそこに妥協が全くない。すごいなと思う。ああいう人を初めて見た」と話す。医療にまっすぐ――この病院には、千葉さんの理想があるのだ。
大津市民病院が一丸となって取り組む、地域に働きかける改革の数々。その背景には、全国の医療機関が抱える構造的な課題もある。 今年の春に赴任した総合内科の大町玲雄さん(30歳 自治医科大学卒)が向かったのは、西村隆吉さん(91)の家。4月から新たに始めた訪問診療は、内科や外科などの医師、看護師、栄養士ら約50人がチームで取り組んでいる。 この日、実施したのは尿道カテーテルの交換で、こうした訪問診療は従来、地域の診療所が担ってきたが、現在、市内で訪問診療を実施している診療所は、全体の3割弱。医師の高齢化に伴い、取りやめるケースが増えてきたという。そこで、大津市民病院がその空白を埋めようというのだ。 日野さんは「一つの医療機関でいろいろなことをできる時代ではない。うちの病院だけに閉じこもり、それだけをやっていたらいいというわけではない。待っているだけではなく、病院という資源をいろいろなところで使ってもらう」と話す。 もう一つの改革の柱は「地域に開かれた病院」だが、大津市民病院が、市民のために新たに取り組む施策とは――。 ※「ガイアの夜明け」より
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