「売れなくなった」を売れるに変える最強思考の型 正しく論理的に考えるだけでは解決策は見つからない
■ミルクよりも食べ物に反応 「いまこのクッキーにミルクが一杯あれば最高」 つまり、このインタビューでの発見は、生活者はミルクよりも食べ物に反応するということです。ミルクは、それだけを飲みたいとは思ってもらえないようで、食べ物の重要なお伴だということがわかりました。対象者によれば、ミルクと一緒だとこれらの食べ物は最高にうまい、ミルクが無ければ台無しだというのです。人がミルクのことを意識するのは、「欲しいのにミルクが無いとき」だけらしいということが明らかになりました。
そこで考えられたのが、ミルクと一緒に食べるものを、ミルクを欲しがらせるために広告の中で使うというアイデアでした。こうして実際に生み出されたのが、「ミルクある? (got milk? )」という広告です。チョコレートチップ・クッキーを食べるシーンでミルクがない事にショックをうけるTVCMなど、組み合わせる食べ物はあるけれど、ミルクがないことで、食べ物もその時間も台無しになってしまうという内容を描いていきました。
このキャンペーンは成功をおさめ、ミルクの売上は増加。過去10年間で初めて売り上げ増加が記録されたのです。 実は、この担当者が最初につかんでいた「クッキーやサンドイッチを食べるときに、ミルクを一緒に飲めないことは耐えられない!」という、データには表れてこなかった気持ちこそが「インサイト」です。 「生活者は『ミルクはパッとしない子どもの飲み物(だから自分には関係ない)』と思っている」といったような、すでに表面に見えているデータからではなく、まだ言語化されていない「隠れていたホンネ」を見いだして、それを起点にアイデアを発想することで、一気に人を動かし、問題を解決できる広告を考え出すことができたのです。
■インサイト起点で、本当に効くアイデアに 「インサイト」を起点に考えることで、アウトプットは大きく変わります。 表面に見えているデータをもとにロジカルにマーケティングを進めても行き詰まってしまうときは、「人を動かす隠れたホンネ」であるインサイトを見つけることが突破口になります。「確かに!」「言われてみれば!」「そうそう、それがこの商品の魅力!」「よくぞ言ってくれた!」と共感されるインサイトが見つかれば、目的を共有する仲間たちの発想を拡げ、インスピレーションを湧き起こし、目的通りに人を動かす良いアイデアや施策を生み出せる確度が格段に上がります。
このようなアイデアや施策をバンバン生むことができると、今の仕事がもっとワクワクするのではないでしょうか? ぜひ、あなたも普段の仕事で「人を動かす隠れたホンネ」、つまり「インサイト」を探り当ててみてください。
阿佐見 綾香 :電通 マーケティング・コンサルタント