【10年ひと昔の新車】3代目BMW 6シリーズ カブリオレは、華麗にして快適、スポーティな演出に酔ってしまいそうだった
快適なクルージングも敏捷な動きも味わえる
早速、スターターボタンにタッチして、4.4LのV8エンジンを目覚めさせる。標準装備のZF製8速オートマチックはスムーズこの上ない高級感のあるトランスミッションだ。高出力のエンジンと組み合わされると、これにピックアップの鋭さが加わってシャープな感じが伝わってくる。 ケープタウンの混雑した市街地を抜け撮影場所の海岸へ向かう。サッカーのワールドカップがもたらした経済効果なのかはわからないが、完成直後と思われる道路はよく整備されており、路面はまったくスムーズである。そのおかげで6シリーズカブリオレはミシリとも言わずクルーザーのように流れて行く。 開発主査のDr.オッホマンによれば、ボンネットとドア、そしてサスペンションの主要部はアルミ製、加えて前後のフェンダーとトランク上部とトノカバーはプラスチック製として大幅な軽量化を行い、歩行者保護などの法規対策による重量増加分を埋め合わせているという。しかも構造部分にはハイテンションスチールを多用した結果、重量の増加を伴うことなく、ボディ剛性はおよそ50%も強化されている。
やがて、交通量の少ない、素晴らしい景観の海岸に到着する。さすがにこの付近の道路は完全には整備はされておらず、凸凹のある路面はカメラマンがブレを心配するほどだった。しかし全長4.89mの巨艦は、大きなボディの揺れや建付けの悪さなどは微塵も見せず、スムーズに撮影を終了することができた。 その後、海岸線のタイトなコーナーが続くワインディングを楽しんだが、ここで6シリーズカブリオレはまるで性格が変わったような、敏捷な動きを見せてくれた。 それを可能にしてくれたのは、正確でシャープ、そしてフィードバックのしっかりしたEPS(エレクトリックパワーステアリング)とオプション装備のインテグラルアクティブステアリング、アンチロールシステムなどの電子アシストシステムであった。さらに前後のベンチレーテッドディスクは過酷なハードブレーキの連続にも少しも音をあげなかった。 ケープタウンの穏やかで暖かな気候では必要としなかったが、6シリーズカブリオレのトップはこれまでどおりキャンバス製で、内部にポリウレタンが組み込まれた遮音性/耐熱性に優れたものとなっていた。もちろん電動で、開くのに19秒、閉じるのに24秒しかからない。しかも40km/hまでなら走行中でも開閉操作が可能だ。 このニュー6シリーズカブリオレの日本への導入発表は、シーズンに間に合うよう3月下旬に決定したようだ。価格はまだ決まっていないが、先代のカブリオレより若干高くなるに違いない。 日本で乗るにあたって少々気になるのは、駐車に注意を払う必要が生じるかもしれないこと。もっとも1000万円を軽く超えるであろう高額なこのクルマを買える人には、問題ないのだろうが。(文:木村好宏)
BMW 650i カブリオレ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4894×1894×1365mm ●ホイールベース:2855mm ●車両重量:1940kg ●エンジン:V8DOHCツインターボ ●排気量:4395cc ●最高出力:300kW(407ps)/5500-6400rpm ●最大トルク:600Nm/1750-4500rpm ●トランスミッション:8速AT ●駆動方式:FR ●最高速:250km/h (リミッター) ●0→100km/h加速:5.0秒 ※EU準拠
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