遠藤航への懐疑論「愚かだった」 指揮官も名指しで称賛…今季初の90分で示した「ここにあり」【現地発コラム】
国内外4冠へ、ライバルには見られない頼もしい戦力
そして、一部には「もう要らない」との声も出始めていたサポーターたちも、遠藤の必要性を痛感することになった。ファン・サイトを見れば、「What a player(なんて凄い選手なんだ)」との反応が多数。試合翌日に聴いたポッドキャスト「ジ・アンフィールド・ラップ」では、出演者3名も「遠藤が本当に最高」と声を揃えていた。 1人が「抜群の信頼性!」と感服すれば、もう1人は「フラーフェンベルフが怪我をしたらどうしようかと不安だった自分が愚かだった」と反省。3人目の女性は、「チームが必要とすれば、いつだって力を発揮してくれる」と感謝していた。 これほど頼れるメンバーが、プレミアのライバル勢にいるだろうか? シティでは、正ボランチのロドリ戦線離脱が首位転落のきっかけとなっている。リーグカップは敗退済みだ。 意外なプレミア優勝候補と言われつつあるチェルシーも、リーグカップではすでに姿を消している。苦しい時にこそ必要な経験値とリーダーシップの不足は、今季から指揮を執るエンツォ・マレスカも認めるところだ。 アーセナルは、前ラウンドでチェルシーを下したニューカッスルと、リーグカップ準決勝で対戦する。しかし、第16節終了時点でのリーグ順位は、チェルシーに次ぐ3位。本来であれば頼りになる冨安健洋という高性能の守備的マルチは、泣きどころである怪我が今季の出場時間を1試合での6分間に留めている。 遠藤がいるリバプールは、トッテナムとの準決勝へと駒を進めることになった。同時に、リーグでは2試合でポイントを落としていた12月に、首位での足場固めにつながる勢いを取り戻しもしたと考えられる。 試合後、本人の言葉を聞くことはできなかった。帰りのフライト時刻の関係で、終了の笛から35分後にはチームバスがスタジアムを出発。ミックスゾーンでの取材対応を不可能とした。 今季初のフル出場を終え、自ら語りたいこともあっただろう。だが遠藤は、この日のピッチ上で雄弁に語っていた。国内外4冠を狙うリバプール戦力、「ワタ・エンドウ、ここにあり」と。 [著者プロフィール] 山中 忍(やまなか・しのぶ)/1966年生まれ。青山学院大学卒。94年に渡欧し、駐在員からフリーライターとなる。第二の故郷である西ロンドンのチェルシーをはじめ、サッカーの母国におけるピッチ内外での関心事を、時には自らの言葉で、時には訳文として綴る。英国スポーツ記者協会およびフットボールライター協会会員。著書に『川口能活 証』(文藝春秋)、『勝ち続ける男モウリーニョ』(カンゼン)、訳書に『夢と失望のスリーライオンズ』、『バルサ・コンプレックス』(ソル・メディア)などがある。
山中 忍 / Shinobu Yamanaka