遠藤航への懐疑論「愚かだった」 指揮官も名指しで称賛…今季初の90分で示した「ここにあり」【現地発コラム】
指揮官が認めた遠藤のクオリティー
その点、遠藤には鈍りも焦りも見られない。バランスを崩した体勢で試みたくさびのパスをカットされ、敵のカウンターを招いた場面はあった。だが、その前には、アタッキングサードでのワンツーで得点に絡んでもいた。 後半14分の失点は、自身がセンターサークル内で倒れていた間の出来事だった。相手MFがライン越しに届けようとしたボールは、距離を詰めていた遠藤の顔を直撃。こぼれ球を拾ってシュートに持ち込んだキャメロン・アーチャーには、CBコンビの相棒だったジャレル・クアンサーが、楽に打たせすぎたと思える場面でもあった。 むち打ちになりそうな勢いでボールが顔面を直撃した遠藤には、終盤に右肩を押さえるようにしてうずくまる姿も見られた。それでもなお、相手1トップがもたらす危険を未然に防いでいた。身長2メートルのポール・オヌアチュが敵の前線に投入されても、空中戦を含めて無難に対処し続けた。 マン・オブ・ザ・マッチには、ダルウィン・ヌニェスとハーヴェイ・エリオットという、両リバプール得点者のいずれかを選ぶ国内メディアが多かった。試合翌日、筆者が手に取った「デイリー・ミラー」紙の言及は、後半16分にサウサンプトンのベンチを出る否や、ピンポイントのクロスでチャンスを演出した菅原由勢と同じ1行のみだった。 しかし、影の功労者の活躍は、然るべきリバプール関係者の目には留まっている。筆頭格はスロット。試合後の会見で、「あえて個人を褒めるとすれば、ワタ(呼称)・エンドウになる」とした指揮官は、ピッチ上で確認された選手、そして個人としての「クオリティー」を理由に挙げている。 だからといって、中盤の底に攻撃的な選手を好む嗜好性が変わり、遠藤がプレミアでも先発を重ね始めるような展開は想像し難い。ただし、戦力としての評価の高さは、この試合でのCB起用自体からも窺い知れた。 直前のリーグ戦後は2日間のオフだったことから、事実上の準備期間は試合前日のみ。ジョン・ストーンズ(マンチェスター・シティ)のような「はまり役」が珍しいアンカーとの兼任役は、新監督が遠藤の「フットボールIQ」の高さをも認めていればこその決断だったはずだ。