《世界が驚いた日本の公立小学校》密着ドキュメンタリーが映し出す「日本人の作り方」に感じる“納得と違和感”【『小学校~それは小さな社会~』】
児童自らが学校を運営するためのさまざまな役割を担い、集団生活における協調性を身につける日本式教育は、海外で注目を集めている。日本人が当たり前にやっていることも、海外から見ると、驚きでいっぱいなのだ。そんな「小学校」を1年間にわたって密着取材したドキュメンタリーがヒット中。ジャーナリストの相澤冬樹がレビューした。 【写真】この記事の写真を見る(11枚) ◆◆◆
小学校や家庭を自然に映し出すカメラ
「私たちは心臓のかけらで、みんながそろったらこんな形になる(両手でハート形)。で、一人こんな風にずれたら、もう心臓はできない」 とある小学校での一コマ。新入生を歓迎する器楽演奏を前に、2年生の女の子の一人が「私たちって何なんだろうねえ」と問いかけたのに、別の子が答えた。そのやりとりが実に自然だ。誰一人カメラ目線にならず、撮影者の存在を意識していないように見える。こうした空気感が全編にあふれている。 映画の冒頭、家庭の玄関にある足形のマークがアップで映し出される。何だろうと思っていると男の子が走ってきて靴をマークの上にそろえて並べる。新入生が学校生活に備えて脱いだ靴をそろえる練習をする場面だ。給食を食器についで机に運ぶ練習では、ゆっくり傾かないように運び終わって「できた!」と笑顔で母親とハイタッチ。家庭内の様子を生き生きと捉えている。これほど学校や家庭に入り込むことができたのはなぜだろう?
学校探しに6年、撮影に1年、現場に4000時間
責任感や勤勉さなど、日本人らしさとして語られる特質の多くは小学校時代に形作られるのでは? 山崎エマ監督が日米双方で過ごした経験からそう感じたことが映画の出発点だという。まず6年をかけて取材可能な小学校を探した。事前に新入生の家庭に通ってなじんでもらう努力を重ね、教室でテスト撮影を繰り返した。休み時間に子どもたちと一緒に遊び、教師とも信頼関係を築いた。学校の一員であるかのような雰囲気を作った上で1年をかけて撮影。山崎監督が現場で過ごした時間は4000時間に達したという。
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