天下り先有力候補 大学教員の採用実態「公募」でも実際は決定済み?
採用方法について大学の公式回答は「公募が主流」
コネ採用と公募の割合は不透明だ。早稲田大学の2014年度の自己点検評価報告書によると、「教員の募集はほとんどの学部・研究科が公募形式をとっているが、専門分野により、一部推薦形式をとっている」と示されている。 しかし、記者会見では、鎌田薫総長が「私はもともと法学系ですけど、早稲田の法学学術院では百三十数年の歴史で公募は一度もやったことがないと思う。基本的に一本釣り(推薦形式)」などと話していた。早稲田大学の広報担当者は「総長のおっしゃる通り、法学学術院では公募をやったことはありません。公募の方が多いことは確かですが、大学全体でどういう割合かは正確にはわからない」と説明する。 一方、公募でしか採用をしないと明言する大学もある。立命館大学の広報担当者は、大学教員の採用は「ほぼ公募で行う」と話した。同大の教員任用規定では「新たに教員を任用しようとするときは、教授会は学部長、または研究科長の提議により3人以上の教員からなる選考委員会を組織するとともに、ひろく候補者を求める」と示されており、公募でやることが決められているというのだ。広報担当者は、「早稲田大学のような『一本釣り』は原則ない」とする。 別の都内のある私立大学も「現在は公募が基本。大学の退職者と、外部のトップ級研究者がフリーになったタイミングがたまたま合った場合はスカウト人事が行われることがありますが、稀な例」だと説明する。公募と見せかけて内定者がいるといった事例はあるか尋ねたが「聞いたことがありません」と回答した。
大学教授になるために必要なものは「論文や記事などの実績と学閥」
大学教授になるための必須条件はあるのだろうか。大学設置基準第14条によると、教授の資格は次のようになっている。 第十四条 教授となることのできる者は、次の各号のいずれかに該当し、かつ、大学における教育を担当するにふさわしい教育上の能力を有すると認められる者とする。 一 博士の学位(外国において授与されたこれに相当する学位を含む。)を有し、研究上の業績を有する者 二 研究上の業績が前号の者に準ずると認められる者 三 学位規則(昭和二十八年文部省令第九号)第五条の二に規定する専門職学位(外国において授与されたこれに相当する学位を含む。)を有し、当該専門職学位の専攻分野に関する実務上の業績を有する者 四 大学において教授、准教授又は専任の講師の経歴(外国におけるこれらに相当する教員としての経歴を含む。)のある者 五 芸術、体育等については、特殊な技能に秀でていると認められる者 六 専攻分野について、特に優れた知識及び経験を有すると認められる者 (大学設置基準より抜粋) 小中学校の教員や保育士のように資格が必要ということもなく、あいまいな規定となっている。 前出の私大教授によると、「以前は博士号を持っていなくても大学教授になれたが、今は持っていたほうがいいという空気になっている」。また、大学教授になれる条件として重要なのが「論文と学閥」だという。特に論文や本を出していることは重視されるといい、「論文は記事でもいいので、新聞記者が大学教授になるパターンが多いのはそのせい。署名記事が多いほど良い」と話す。学閥についても、「各大学が企業の子会社のようにポジションを持っている。自分が行きたいポジションに力のある大学にコネを作っておくことは重要だ」という。 また、大学教授に応募する際に提出する推薦書もポイントだという。「推薦書を書いた相手が、採用側に知られていなければほとんど意味はない。書いてもらうのが採用する側の知り合い、採用側が知っているぐらい著名な人物であれば有効だ」。