刑務所の前で「出待ち」を毎朝続けるひとりの男性、何をしている? 「刑務官はいい顔をしないが、やめられない」同行して分かった理由と覚悟
▽認識外の要支援者 松浦さんが率いるTSUNAGUは現在、精神障害者らの住居探しを支援するほか、大阪市東淀川区でグループホームを経営している。居住者のほとんどが大阪刑務所の満期出所者だ。 「ウチが専門にする満期出所者は、いわば刑務所にいたくてもいられない人たち。帰る家があろうがなかろうが、放り出されてしまう。彼らをなんとかしなくては、と支援を始めたんです」 身寄りがなく、お金も携帯電話もない人が多い。家を借りたくても借りられない。そうなると生活保護も申請できない。決まった住居がないと申請できないためだ。松浦さんらは独自に住居を借り上げて、生活保護までサポートする仕組みを取っている。 ただ、毎朝声をかけても、応じるのは月に3~5人程度だ。 さらに、利用者は全員が再犯者だという。最も多い人で計8回の懲役経験者がいると聞いた。 「帰る場所がなくて、社会とのつながりがなかったのでそうなっちゃったと思うんですよ。守るものがないというか、自分の人生を自分で背負っているだけなんで。どっかで、心のストッパーになれればいいんですが」
TSUNAGUは刑務所とも連携し、月に2人ほど満期出所者を紹介してもらっている。その際は刑務所の中で松浦さんが面談して、合意できれば支援を引き受ける。刑務所の中でそれができるのに、なぜわざわざ“出待ち”するのか。 松浦さんに尋ねると、こんな事情を説明してくれた。 「刑務所からは『支援が必要な人がいたら紹介するから』と出待ちをやめるよう言われてます。でも、ほどんとの受刑者は、いち早く刑務所と関係を切りたいと思っていて、刑務所がするアンケートで『帰る場所はありますか?』と問われると『ある』と書いちゃうんですよ」 さらに、帰る場所があると信じて出所したものの、以前の住居が契約切れになっているなどして途方に暮れているケースもある。 「だから、刑務所側の認識から漏れている要支援者を拾うには、僕らみたいな団体が必要なんです」 ▽安息の地 TSUNAGUのグループホームに居住する、知的障害がある男性(51)は、昨年11月に松浦さんに声をかけられた。過失運転の罪で略式起訴され、罰金50万円の納付を命じられたが支払えず、3カ月の労役を命じられて収監されたのだった。