万博開幕 ディスカバー・ジャパン、もう一度で特需継続 大阪公立大・橋爪紳也特別教授 昭和100年 輝く関西に向けて
2025年は昭和という激動の時代が始まって100年の節目になる。 昭和とは「書経」の「尭典」にある「百姓昭明(ひゃくせいしょうめい) 協和万邦(きょうわばんぽう)」の言葉から採られた。すべての人が自分の徳を明らかにすることで、国々が心をあわせることができるといった意味合いになろうか。 【写真】2025年大阪・関西万博が開かれる夢洲の会場=昨年11月、大阪市此花区 4月に開幕する大阪・関西万博は「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに掲げる。誰もが人生を充足することができる社会を、世界の叡智(えいち)を集めて実現させることを目的とする。「百姓昭明 協和万邦」を具現化する場といっても良いだろう。 国際博覧会の開催は、大阪や関西にどのような効果をもたらすのか。とりわけ観光業界では、万博への期待が高い。インバウンド客の増加を見据えて、大阪ではホテルの開業があいついだ。いっぽうで大阪市立美術館のリニューアルや、大阪城の豊臣時代の石垣を公開する新たな施設の開業も予定されている。 博覧会場では連日、各国のナショナルデーが開催され、当該国の政府代表団やビジネス関連のミッションが大阪はじめ関西各地を訪問する。国際会議も多く予定されている。2025年は大阪が内外から注目されることは間違いない。 「万博プラス関西観光」として広域への波及効果も期待されている。もっとも観光行動の総量に変化がなければ、大阪への旅行者は増えても、他を訪問する人が相対的に減じる懸念がある。対応策として連泊を促し、また広域周遊の魅力を訴求し、総じて観光消費額を高めてゆくことが求められる。 重要なのは、万博の特需を一過性としない実践である。1970年大阪万博が先例となる。アジア初の万博開催時には、東海道新幹線を利用する団体旅行が一般化した。だが、その後の冷え込みを懸念した国鉄は、新たな旅行ブームを産むべく、早くも閉幕1カ月後にディスカバー・ジャパン・キャンペーンを始めた。2025年の大阪・関西万博も同様に、そのレガシーを活かしつつ、新たな意欲的な国際観光の振興を閉幕後も継続する術が求められる。 大阪・関西万博に関しては、私は大阪府案の策定当初から誘致、開催に至るまで、10年にわたって、さまざまな立場で関与してきた。今回から始まる連載ではこれまで語られてこなかった博覧会の内実にも触れつつ、大阪や関西の行く末について検証していきたい。