オカダ・カズチカがちょっと我慢をしてもフェラーリに乗る理由
プロレスラーには限界から先の姿を見せていく使命がある――。新日本プロレスのスター選手として活躍後、アメリカのプロレス団体「AEW」でも躍進を続ける“レインメーカー”オカダ・カズチカが、その人生の極意を語る。『「リング」に立つための基本作法』より一部を抜粋してお届けします。
「フェラーリに乗るのは、僕の使命だ」
僕は真っ赤なフェラーリに乗っている。 理由は、常にカッコよくありたいからだ。そして、子どもたちにとってプロレスラーがカッコいい、憧れの存在であってほしい。 きっかけは、漫画やアニメの『タイガーマスク』だ。 物語の主人公、タイガーマスクこと伊達直人は、自分を育ててくれた孤児院「ちびっこハウス」にファイトマネーを寄付している。そのため彼を鍛えた悪役レスラー養成機関「虎の穴」への上納金を払えなくなり、裏切り者とされて、刺客のレスラーを次々と送られる。 子どもたちに夢を与える存在として、タイガーマスクは相手の反則攻撃に耐え、自分はフェアに闘おうと努める。 伊達直人はいつも真っ赤なスポーツカーを運転していた。その影響で、僕も真っ赤なフェラーリを選んだ。 フェラーリに乗るのは自分の使命の一つだとも感じている。 プロ野球選手やサッカー選手にはポルシェを選ぶ人が多いと聞く。プロレスラーには、そういう選手はまだ少ない。身体が大きかったり、家族が多かったりという現実的な事情もあり、大型のSUVを選ぶ傾向がある。そういう事情を考えても、若くて子どものいない僕がフェラーリに乗らなくてはいけないと思ったのだ。 ちなみにフェラーリの前にはコルベットに乗っていた。その際、ぶつけられて警察の人に職業を聞かれたことがあり、プロレスラーと答えたら「プロレスラーでもこんなクルマに乗れるんですね」と言われ、プロレスラーはカッコよくなければいけない、とさらに思ったのを覚えている。 プロレス界のトップとして、僕はプロレスを盛り上げなくてはいけない。新日本でも、他団体でも、多くのレスラーに、オカダのようにフェラーリに乗りたい、と思ってもらいたい。闘うモチベーションにしてほしい。世間にもプロレスラーがフェラーリに乗れると知ってほしい。 そして子どもたちには、プロレスラーを目指してほしい。僕も強くなって、フェラーリを駆りたい──と、子どもたちが憧れる職業にしたい。 とはいえ、フェラーリに乗るためには、実はちょっと我慢をしてはいる。なによりもまず、二人しか乗れない。妻を助手席に乗せたら、友人は一人も乗せられない。狭くスピードを出せない都内の道では必ずしも走りやすいとはいえない。 それでも、フェラーリに乗るのは、僕の使命だ。
TEXT=オカダ・カズチカ