【やっぱり残念】別れが惜しまれるスマートなコンパクトカー物語 この4台は間違いなく都市交通のスマートなソリューションだ!
その3: VW up!
大林晃平:この「up!」が登場した時、多くの自動車雑誌は大々的に取り上げたものだ。中でもカーグラフィック誌の取り上げ方は一番「推し力」が強く表紙も「up!」だったし、現地試乗した編集記者などは「自動車の価値感を変えるほどの存在」と評した。
実際に「up!」は(所有していたこともあり)、実に偏差値の高い一台で、特に高速での安定感やスペースユーティリティの面で、この4台中圧倒的な完成度を誇る。おそらく開発コストやそこに込められたエネルギーなどは、相当なものであろう、と感じてしまうほどのバランスの取れた一台だった。
そっけないけれど必要十分以上の装備、決して手を抜いていない自動車の基本的な、走る、曲がる、停まるの部分はもちろん、デザインも古くさくならないばかりか、今のフォルクスワーゲンのモデルよりもずっとシンプルで機能的だ。でもなぜか「up!」は、人の記憶から忘れ去られそうな存在になってしまっている。
個人的にその問題点を考察すると、本国の記事にも記されているが、シングルクラッチの自動変速トランスミッションが原因なのではないか、とちょっと思う。ギクシャクと下手くそな変速を繰り返しながら、日本の路上にはまったく合わないシフトタイミングを繰り返すし、信頼性も低く、実際に僕の所有した「up!」も一度トランスミッションを全交換している。保証期間内だったため助かったが、それ以降だったら相当の金額がかかったことだろう。 せっかくの完成度の高い「up!」なのに、このミッションの完成度はあまりにも他のDSG搭載のフォルクスワーゲンと違いすぎる・・・。さらに日本市場にはスポーツモデルのGTI以外にはマニュアルミッションを選択できないという不条理さ。フォルクスワーゲンジャパンが、もしベーシックな4ドアにマニュアルミッションを組み合わせて売っていたならば、もう少し「up!」は日本で自動車好きに受け入れられたのかも、そう思うと日本導入の車種選択が残念でならない。