BtoBのサブスク製品は、なぜ2本以上売った方が解約率が低いのか?
■ KSFを探す重要性の認識 前述のタブロー社に入社した早々、KSFを探す重要性に衝撃を受けた出来事がありました。 中小企業担当チームのゴールが、なんと四半期の売上ではなく新規顧客獲得数(New Logo)だったのです。 もちろん、最終的な目標は売上ですが、当時のデータ分析で、中小企業営業においては初期段階で売上よりも顧客獲得を優先し、まずは1本でも多くのライセンス導入を実現することが、結果として生涯売上(LTV)の最大化に繋がると判明していたのです(後に、2本以上の販売が重要であるというデータも得られました)。 外資系企業では、営業の役割が効率重視で細分化されているケースが多く見られます。初期導入専門の営業であれば、成約後には顧客を別の担当者に引き継がなければなりません。 この場合、売上目標を達成するために、最初の販売機会を最大限に活かそうと、トライアルの無償提供を続け、案件を可能な限り大きくしてから顧客を引き渡す、という行動が往々にして起こり得ます。 しかし、Land&Expand戦略(まず小規模から導入を始め、アップセルやクロスセルで収益を拡大する戦略)を採用していたタブロー社では、1件でも多くの新規顧客に導入(Land)してもらうことで、顧客自身が製品価値を実感し、すぐに拡張(Expand)してくれるという確信がありました。 短期的な売上目標にとらわれず、あえて新規顧客数(New Logo)をゴールに設定することで、1件の成約を重視し、長期的な視点で売上最大化を目指していたのです。その後、中小企業担当チームにおいても、新規顧客数は最終目標(KGI)ではなく重要なKSFという位置付けに変化しましたが、私が退社するまでその重要性は揺るぎませんでした。
遠藤 公護