AIで「動物とコミュニケーションを図る」プロジェクトが25億円を調達
初期バージョンはさまざまな動物の音声録音の中からパターンを特定できる
同NPOは、2030年までに人間が他の種とコミュニケーションがとれるようにするか、少なくとも彼らが何を言っているのかを理解できるようにしたいと考えている。彼らは、これまでシロイルカやカラス、キンカチョウなど特定の動物の発声パターンに関する研究を行っているほか、ChatGPTに類似したものに進化させることを目指す基礎モデルを開発しており、2022年にリリースした初期バージョンは、機械学習技術を駆使してさまざまな動物の音声録音の中からパターンを特定することができるという。 アース・スピーシーズ ・プロジェクトは設立以来、査読付き論文を5本発表し(現在6本目も準備中)、3本の論文を自費出版している。これらの論文の一部は特定の種に関連したもので、他は基礎モデルに関するものだ。 アース・スピーシーズ ・プロジェクトは、シリコンバレー出身である創業メンバーのコネクションを活かし、ビリオネアからの寄付で事業を運営してきた。ラスキンがホフマンと出会ったのは、彼がMozillaで取締役を務め、Firefoxの設計に携わっていたときのことだ。ラスキンは、2015年に初めてホフマンにアース・スピーシーズ ・プロジェクトのアイデアを共有した。 ■地球と人類の生命を維持することにつながる 「ホフマンは、文化や言語を持つのは人間だけでないことがわかったときに何が起こるのか、そしてそれが人類と自然との関係にどのような変化をもたらすのかという哲学的な話に魅了された」とラスキンは言う。彼は、2022年に気候変動対策に取り組む友人から、パウエル・ジョブズのWaverley Street Foundationを紹介されたという。ラスキンは、動物をより人間的に見せることで、動物や生物多様性に対する人々の関心が高まり、地球と人類の生命を維持することにつながると考えている。
さまざまな生物の録音を収集が必要という学習データへのアクセスが最大の課題
ホフマンは、過去3年間に渡って年間100万ドルの資金をアース・スピーシーズ ・プロジェクトに提供してきた。ブロックチェーン業界のビリオネアであるクリス・ラーセンや、インターネットアーカイブ、マイクロソフトの共同創業者だった故ポール・アレンのポール・G・アレン・ファミリー財団も同NPOに寄付をしている。 ラスキンによると、このプロジェクトにおける最大の課題は、学習データへのアクセスだという。大規模言語モデルがインターネット上のあらゆるデータで学習できるのとは異なり、アース・スピーシーズ ・プロジェクトではさまざまな生物の録音を収集する必要がある。また、同NPOが保有するデータを含め、ノイズの多い環境から個々の動物の鳴き声を分離するのは技術的に困難だ。 さらに、動物のコミュニケーションを理解するためのAIモデルは、人間用のモデルと同じく計算コストが高いにも関わらず、資金が集まりにくいという問題もある。この研究に対する懐疑論者たちは、動物のコミュニケーションを翻訳するという考えは、それらが人間の声と類似性があることを前提としているが、そもそもそうではない可能性があると指摘している。 アース・スピーシーズ ・プロジェクトは非営利団体ではあるが、創業者メンバーたちは、起業家の目線で事業を運営している。ラスキンは、今回獲得した寄付金を一般的なスタートアップが初めてクローズした大型ラウンドのようなものだと捉えている。生物学者たちは、野生動物の録音データを解読するために彼らの基礎モデルを使用しており、例えばカラスが巣立とうとしているときに発する音を判別できるという。「今の我々に必要なのは、資金調達だ」と彼は語った。
Phoebe Liu