観光プロモーションも「ステマ規制」の対象、注意すべきポイントを弁護士が解説【コラム】
OTAへのレビュー投稿で割引クーポン付与は?
観光アクティビティ事業者とOTAに関わる事例はどうでしょうか。 ------- 観光アクティビティをOTAに掲載する事業者Bが、顧客らが同OTA上でレビュー(クチコミ)を投稿すれば、次回以降の予約で使える割引クーポンを提供するキャンペーンを実施します。 これに反応した顧客がレビューを投稿、割引クーポンを受領しました。 ------- この場合、顧客の投稿するレビューが、要件1の「事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示」であるかが問題となります。 事業者が第三者の表示に関与したとしても、客観的な状況に基づき、第三者の自主的な意思による表示内容と認められるものであれば事業者の表示には当てはまりません。 事業者Bが、割引クーポンを高評価のレビュー投稿を条件として提供しているなど、表示内容に関して対価や経済上の利益が提供されている事実がなく、その他事業者Bと顧客との間で投稿内容についてのやり取りが一切行われていない場合には、顧客の自主的な意思による表示内容として要件1が充たされず、ステマ規制の対象とはならない可能性が高いといえます。
海外の規制法令にも配慮が必要
観光産業では、外国の事業者と直接取引を行う場面も少なくないでしょう。その場合も、外国の事業者が日本国内の消費者向けに表示を行う際には、ステマ規制の適用対象となることに注意が必要です。実際、日本に本店も営業所もない事業者が日本の消費者向けにオンラインゲームを配信していたケースで、事業者が行った表示について景品表示法に基づく措置命令が出された事例があります。 また、海外にもステマを禁止する法令があり、そのような法令に基づく処分事例も数多くあります。急増するインバウンド客を誘致するために外国市場向けのステマを行う場合は、日本の規制だけでなく、その国・地域の規制にも配慮することが求められています。 執筆者プロフィール
【執筆者プロフィール】 千石 克 (せんごく かつ) 西村あさひ法律事務所・外国法共同事業 オブカウンセル。国内、クロスボーダーの航空機、船舶その他のアセットを対象としたファイナンス、トレーディング、リース等取引案件の組成、交渉及び実行をサポート。航空ビジネスプラクティスチームで産業全体のあらゆる法務問題・制度論に取り組む。 赤松 祝 (あかまつ はじめ) 西村あさひ法律事務所・外国法共同事業 アソシエイト。国土交通省航空局において空港の民営化事業に従事後、英国Cranfield Universityで諸外国における航空・空港ビジネスを研究、Air Transport Managementの修士号取得。航空ビジネスプラクティスチームで、航空・観光産業の新規ビジネス構築に際する各種規制対応や国際取引へのアドバイスを提供。 吉井 一希 (よしい かずき) 西村あさひ法律事務所・外国法共同事業 アソシエイト。国際通商法(WTO協定、輸出入規制、経済制裁等)や競争法が専門分野。航空ビジネスプラクティスチームで観光・航空産業が直面する様々な法的問題(国内外の規制対応を含む)にアドバイスを提供。
トラベルボイス編集部