高橋大輔「人生のターニングポイント」に大きく影響を与えてきた「氷艶」を語る
スケート靴を脱いだテリトリーでの挑戦
長唄と鼓の音に合わせた手踊りがアクセントとなり、会場を熱狂の渦に巻き込んだ高橋さんの舞。この、東京ゲゲゲイの手踊りを取り入れ、尾上菊之丞氏振付の日舞と融合させた「阿国の舞」は、今もファンの間では語り継がれている。 「あそこは、最初の氷艶において、僕の中での山場でした。スケート靴を履いていれば自分のテリトリーですが、靴をはかずに、歌舞伎俳優さんたちの前で日舞を踊る。その状況で一体自分が何を見せるのか? と。ダンスのプロでもないわけですし。しかも日舞は、奥が深すぎて、非常に難しかった。どのダンスも奥が深いとは思いますが、独特の抜け感、『ぬるっ』とした感じ、大きく動かずに魅せるのは、僕には本当難しくて。 菊之丞先生はやさしく教えてくださり、その所作はできるだけマネをするというか、盗むようにしていましたけど、その中で自分のニュアンスを出さなくてはいけない。東京ゲゲゲイさんの手踊りの振りも難しく、本当にあれは、演者として刺激がありましたね。また歌舞伎役者の方たちが、スケートリンクで深夜に共に練習し、そこから本番にどんな風にあわせていくかを間近で見られたことも、非常に勉強になりました」 この第一回の氷艶の出演が、スケートを軸にパフォーマーとして生きていく覚悟をする大きな要因となり、まずは自分のスケートを取り戻すために、翌年18年、高橋大輔さんは、男子シングルの現役選手に復帰したのである。 インタビュー後編「高橋大輔が振り返る初の「氷艶」ラブシーン「今の自分だから表現できること」」では、歌と芝居に挑戦し、19年に源氏を演じた「氷艶 月光かりの如く」の時のエピソード、そして今年6月に5年ぶりに、宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」をモチーフにした「氷艶 十字星のキセキ」に臨む高橋さんの心境や現状について聞く。 ---------- 「氷艶 hyoen 2024 -十字星のキセキ-」 横浜アリーナにて、6月8日、9日、10日、11日 16時開演 「君とまためぐり会いたい、この銀河の片隅で」 宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」をモチーフにした氷上総合エンタテインメント。現実と銀河の世界を舞台にした、幼馴染の二人の永遠の別れの先にある、魂の再生の物語。 演出統括:尾上菊之丞 脚本:坂口理子 主演:高橋大輔 主題歌・劇中歌:ゆず 出演者:高橋大輔、大野拓朗、荒川静香、エハラマサヒロ、村元哉中、友野一希、島田高志郎、長谷川開、エリアンナ、まりゑ その他 https://hyoen.jp ----------
田中 亜紀子(ライター)