『silent』級の感動が再び…月9新作『海のはじまり』に最大の注目が集まる「納得の理由」
『silent』級の感動、『silent』級の大ヒットとなるか? 7月1日(月)スタートの月9ドラマ『海のはじまり』(フジテレビ系)は、7月期ドラマのなかでもトップクラスに注目を集めている作品となっています。 【写真】「嵐“再始動”」はメンバー本人たちこそ切望していると思えた納得の理由 その理由は、TVerの見逃し配信で驚異の7300万再生を超え、社会現象を巻き起こした『silent』(2022年/フジテレビ系)の脚本家・生方美久氏の最新作だからです。 前編記事『「月9」が今期最大の目玉になっている…『silent』も手がけた「若き脚本家」が天才と言えるワケ』に続き、最新作『海のはじまり』をより一層楽しむために、生方作品『silent』&『いちばんすきな花』2作の魅力を、年間・約100本寄稿するドラマ批評コラム連載を持つ筆者が解説していきます。
男女の友情を描いた『いちばんすきな花』
『silent』に続いて2023年放送の『いちばんすきな花』(フジテレビ系)。 多部未華子さん演じる塾講師・ゆくえ、松下洸平さん演じる出版社社員・椿、今田美桜さん演じる美容師・夜々、神尾楓珠さん演じるイラストレーター・紅葉。この四人が全員主人公という異例のスタイルのドラマでした。 テーマは「男女の間に友情は成立するのか?」。 ゆくえは唯一心を許せた男友達から、結婚することになってもう会えないと告げられ、悲しみに暮れていました。椿は結婚目前だった恋人を、その彼女の男友達に奪われてしまい、新婚生活を送るはずだった新居で独り身に。夜々は純粋に友達になりたいのに「顔がいい」せいで、男たちから勝手に恋愛的な下心を持たれてしまう。紅葉は友達っぽく繋がっている人はたくさんいるものの、1対1の本音で向き合える相手は一人もいない。 そんな人間関係の“生きづらさ”を感じていた彼・彼女らが偶然出会い、四人でいる空間の心地よさを感じて、性差を越えた絆を深めていくのです。 特筆すべきは主人公たちのキャラクターが誇張されていないこと。 この手のトラウマを抱えているタイプの主人公は、たとえば周囲から浮いているように描かれ、“ぼっち感”や“変人感”を過剰に演出されることが多いのですが、本作は違います。四人とも表面的には普通に友達がいたり、職場でもそれなりに馴染んでいたりして、極端な陰キャやコミュ障としては描かれていないのです。 インパクトやわかりやすさを重視する作品とは真逆のキャラクター造形で、令和の時代における等身大の“生きづらさ”が生々しく描かれていきます。 生方氏は独特な視点で繊細な心理に気付き、人々が心に抱えているモヤモヤを言語化するのが非常にうまい。キャラクターたちの心の機微を表現する才能がずば抜けているのでしょう。