【大学トレンド】プロ野球場そばに、医療大の新キャンパス 一体化のメリットは?
スポーツの街に、医療のさまざまな専門家
移転によって、Fビレッジのキャンパス内にすべての学部・学科と附属病院が集約され、医師や看護師、薬剤師、介護士などさまざまな専門家が協力して、一人の患者の医療や介護サービスを提供する「多職種連携」が行いやすくなることもメリットです。またFビレッジはスポーツ施設を中核とする施設であることから、学生にとっては学部学科を越えて学ぶチャンスも増えそうです。 「医療系の大学は上の学年になると、病院や福祉施設、薬局などの現場で学ぶことが常になっています。スポーツ施設があれば、薬学部ならドーピング問題、歯学部ならボクシングやアメフトの選手に必要なマウスピースの製作、看護福祉学部やリハビリテーション科学部なら障がい者スポーツや故障した選手の理学療法など、本学の学びを間近で見られる機会も多い。いろいろな面で、学生と専門家が一緒に研究したり、実践したりということができるようになればと期待しています」 Fビレッジは、球場とその周辺の施設だけでなく、北海道医療大学のほかにもホテルや老人福祉施設の建設が予定されているなど、もっと広い意味の「街」を作る計画が進んでいます。北海道医療大学にとっては、現在大学がある当別町の跡地の活用法などの課題が残っているものの、大学の関係者や学生は移転に大きな期待を寄せています。 「街が完成すれば、将来必要になるアルバイトは5000人との試算もあります。学生がさまざまなアルバイトを経験しながら勉強もできる環境を実現できるのは、大変ありがたいことです」
街と一体化するキャンパス移転
近年、大学が地域や産業と連携して、新たな価値を生み出そうという例が相次いでいます。例えば立命館大学は、衣笠キャンパス(京都市)の映像学部・研究科と、びわこ・くさつキャンパス(滋賀県草津市)にあった情報理工学部・研究科を、24年4月に大阪いばらきキャンパス(大阪府茨木市)に移転し、6学部7研究科の総合的な学びの場となりました。大阪いばらきキャンパスは、15年の開設時から「地域・社会連携」を教学コンセプトの一つに掲げてきましたが、2学部の移転に合わせて新しい教室棟や施設などをつくり、地域・社会に開かれたキャンパスとなっています。 25年11月には、近畿大学医学部・病院が現在の大阪狭山キャンパス(大阪府狭山市)から、大阪府堺市に新設されるキャンパスに移転する予定です。新キャンパスは大阪中心部からのアクセスが良く、関西国際空港からも近い好立地というだけでなく、大規模な医療の拠点ができることで、老朽化が進む泉北ニュータウン地域の再生につながることが期待されています。 27年4月には北九州市立大学が、小倉市街中心部にある旦過市場内に新キャンパスを開設し、新設の情報イノベーション学部(仮称)を置く予定です。1階部分が市場店舗、2~5階部分が大学という市場と一体化したユニークな構造で、企業などと連携して高度なデジタル人材を輩出・供給するだけでなく、北九州市内へのさらなる企業の集積や、街の発展に貢献すると発表しています。 キャンパス移転による地域や産業などとの連携から、大学の新たな価値が生まれていきそうです。
朝日新聞Thinkキャンパス