【大学トレンド】プロ野球場そばに、医療大の新キャンパス 一体化のメリットは?
大学のキャンパス移転が相次いでいます。とくに都市の中心部や駅から近い場所に移転することで、学生のアクセスや就活などの利便性が上がる例が多く見られます。それだけでなく、プロ野球の本拠地がある複合施設に移転予定の北海道医療大学のように、移転先の環境を生かして、学生の学びを深めることが期待される例もあるようです。 【写真】北海道医療大学が移転予定の北海道ボールパークFビレッジの完成イメージ図
プロ野球の北海道日本ハムファイターズが本拠地としている北海道北広島市のエスコンフィールドを中核とする複合施設「北海道ボールパークFビレッジ」。野球場がボールパークと呼ばれ、野球の試合だけでなく周辺施設を丸ごと楽しむ文化がある米国メジャーリーグにならって、エンタメからグルメまでを楽しめる施設で、2023年のオープン以来、北海道の新しい観光名所の一つになっています。 そのFビレッジへ28年4月に大学キャンパスを移転することを23年10月に発表したのが、北海道石狩郡当別町にある北海道医療大学です。薬学部、歯学部、看護福祉学部など医療技術に関わる6学部9学科および歯科衛生士専門学校があり、約3500人の学生と約800人の職員を擁する、北海道では最大級の医療系総合大学として知られています。 鈴木英二理事長は移転のいきさつをこう説明します。 「24年に創立50周年を迎え、初期の校舎は建て替えの時期が迫っていることが、移転の背景にありました。また、東京では一時期郊外へ移転していた大学の多くが都心に戻ってきているという話も聞くようになりました。私たちも、現在のキャンパスで校舎を建て替える場合、札幌市内やその近郊に移転する場合など、さまざまなケースでの建て替えシミュレーションを2年ほど前から行ってきました」
「構想が合致した」
現在のキャンパスの最寄り駅は、札幌から電車で北に約42分の場所にあり、冬は吹雪で電車が止まることもあり、学生からは通学環境への不安の声が多く上がっていました。また学費をアルバイトで捻出する学生が多いことも、移転の理由の一つです。学生の中には、札幌まで往復2時間かけてバイトに行っていたものの、雪で行けなくなって、辞めざるを得なくなったという話も耳にしたと言います。 北海道医療大学の前身の東日本学園大学は1974年に設立され、当時は教養部を釧路近くの音別町に置いていました。札幌まで電車で4~5時間かかる音別校舎を廃止して、1985年に全キャンパスを札幌に近い当別町に移転・統合したことで、「学生募集の面で効果が大きかった」という経験も、移転を後押ししたと言います。 「本学の移転構想と、地域社会の活性化や社会への貢献につながる『共同創造空間』を目指すというFビレッジの構想が合致しました」 Fビレッジのスタジアム近辺にはJRの新駅も設置され、新千歳空港から約20分、札幌市内からも20分程度という交通の便のいい大学に生まれ変わる予定です。