「103万円の壁」引き上げで広島市は300億円減収と試算 引き上げ額はどう決める?【テレビ派・長島カイセツ】
一方で、減税するということは、税収が減ることにもなります。国税である所得税と、地方税である住民税の控除額を同様に引き上げた場合には、国と地方で合わせて7兆3000億円の減収になると試算されています。これは、国にとっても地方にとっても、非常に深刻な問題です。
広島市は、年収の壁が178万円に引き上げられた場合、300億円の減収になるという資産結果を明らかにしました。 認定こども園や公立保育園運営費などの「子ども子育て予算」に匹敵する金額で、影響は大きいと指摘します。
■広島市 松井市長 「働き方改革とかインフレが進む中で、適切な措置ということは異論はないけれども、(国が)措置の仕方をどうするかを明らかにしないでやるのは、非常に心配だと。」
控除合計103万円は、29年前の1995年から変わっていません。国民民主党が掲げる178万円の根拠として、東京都の最低賃金を基準にしています。1995年の最低賃金から、今は73%上昇しています。そうすると、103万円に対して73万円分をプラスすると、75万円増えることから「壁は178万円」という計算をしています。しかし、最低賃金ではなく物価上昇率をベースとする考え方もあり、1995年と比較すると物価上昇率は10%程度となり、その場合の年収の壁は113万円余りとなります。
租税法が専門の広島修道大学法学部の奥谷健教授は、103万円のうちの基礎控除と給与所得控除の意義を考えると、壁の引き上げは当然必要だと指摘します。 ■広島修道大学法学部 奥谷健教授 「基礎控除は、憲法25条の生存権の税法上の現れであると言われています。これが48万円あります。月4万円で最低限度の生活が営める人は、おそらくほぼいないだろうと思います。」
その上で、上昇率についての今の議論には、疑問を呈します。 ■広島修道大学法学部 奥谷健教授 「ただ、今の議論は最低賃金の上昇率に基づいてということで、1.73倍というように議論がされている。そこはやはり対象とするというか、比較対象とするものは、物価を基準に考えていかないといけないのではないかな、というところがあります。」
今は「103万円の壁」というフレーズが先行しているところもあり、それぞれの控除の意義や、「何のためにあるのか」という目的が少し置き去りになっているようにも感じられます。財源の問題と同時に、誰のために、どのような意図で減税をするのか、しっかりとした議論も必要です。 【2024年11月22日放送】