7年ぶりの挑戦 第3部 大分/上 選手と一丸「屋台骨」 /大分
「聖華さん、ネットが、またやぶれてしまった」「聖華さん、サポーターはどこですか?」--。次々と大分野球部の選手らが声をかけてくる。大分の2年生マネジャー、後藤聖華さん(17)は一つ一つ明るく返事をし、テキパキとこなしていく。選手らから頼られる存在、同部を支える大事な「屋台骨」だ。 マネジャーの仕事は、グラウンドの整備からスポーツドリンクの補充まで多岐にわたる。最も時間をかけるのはボールの補修。使えなくなったボールの表皮をそいで、ビニールテープを巻き付けて雨の日の練習用の「カラーボール」を作る。ボールは次々と駄目になるので、1日100個近く補修することも。ボールだけではない。雨の中、4時間かけて選手と一緒にグラウンドを整備したこともある。 後藤さんは臼杵市で育った。実は野球に興味があるわけではなかったという。変わったきっかけは中3だった2016年夏。たまたま母に誘われて足を運んだ大分市の別大興産スタジアムで、甲子園出場を懸けた大分と佐伯鶴城の決勝を観戦し、優勝をつかみ取った大分の選手の活躍に感動した。「こんな熱い世界があるんだ」。 大分に進学し、マネジャーになるため野球部に入部した。しかし、朝練は午前6時半から始まり、放課後練習は遅いと午後9時まで続く。臼杵市から電車で通学していたが、このままでは体も休めず、十分にマネジャーを務めることができない。限界を感じた後藤さんは母に直訴。「聖華がそこまで熱中しているなら」と、高1の秋には家族で大分市内に引っ越した。 重労働の仕事が多いマネジャー。時にはつらいこともある。しかし、「選手が『ありがとう、聖華さん』と声をかけてくれる。私も野球部の一員なんだと思うと、つらさも吹き飛ぶ」 ◇ ◇ 後藤さんと二人三脚で野球部を支えるのは、もう1人のマネジャー、1年の釘宮梨桜さん(15)だ。野球をしていた父と兄の勧めで入部。最初はあまりのハードワークに「こんなにきついのか」とくじけそうになることもあったという。しかし、先輩の後藤さんの支えもあり「タフになった」と笑う。今では、大きな体の選手たちとも対等に議論をしたり、「それぐらい自分で片付けなさい!」と叱ったりするように。当初は苦手だったスコアブックの記入は「おしゃべりしながらでも書ける」ほどになった。 全力でチームを支える後藤さんと釘宮さん。夢舞台への思いは選手たちにも負けない。マネジャーと部員が一丸となって全国制覇を目指す。