【元警察官が解説】なぜ白バイ隊員はジェットヘルメットを使用しているの? フルフェイスより優れた面は?
安全性の高さを鑑みれば、ヘルメットはフルフェイス一択というライダーも多いことだろう。しかし、公道の安全を守る白バイ隊員が身につけているのは、なぜかジェットヘルメット。これはなぜなのだろうか? 元白バイ警官の宅島奈津子さんが解説する。 【画像】AT限定免許で乗れる125ccスクーターおすすめ11選
フルフェイスが万能⁉
ライダーにとって必需品であるヘルメット。みなさんは、どういった基準でヘルメットを選んでいますか。安全性やデザイン、機能性等、選ぶポイントはいろいろありますよね。 一言でヘルメット、とはいってもさまざまなタイプのヘルメットがあります。簡単に分類すると、フルフェイス/ジェット/オフロード/システム/ハーフの5種類に分けられます。 中でも安全性が一番高いのは、フルフェイス…というのが一般的なライダーの認識でしょう。ロードレーサーともなれば、必ず全員がフルフェイスを採用していますし。「フルフェイスが万能」という方も多いのではないでしょうか。
白バイ隊員のヘルメット
ですが、白バイ隊員はフルフェイスではなく、ジェットヘルメットをかぶっています。このヘルメットは、「アライヘルメット」や「SHOEI」が製作している特注品で、原型となる市販品はありますが、細部は特別仕様となっており、同じヘルメットは市販されていません。 市販品との大きな違いは、警察章が付いていること、反射テープが貼付されていること、マイクホルダーと音声調整つまみが装着されていること、そして、バイザーの色が白であることです。 白バイ隊員のヘルメットは制服の一部であり、支給品でもあるため、隊員の好みで選択することはできませんが、なかにはフルフェイスがいいと思っている隊員ももちろんいるわけです。 私自身、プライベートではフルフェイスのヘルメットをかぶっていたので、双方のメリット、デメリットについては熟知しているつもりです。そんな私でも、白バイ乗車時はジェットが適していると感じていました。
白バイ隊員がフルフェイスではない理由
こでは代表的なものとして、フルフェイスとジェットの比較を挙げさせていただきます。これらのヘルメットを装着してみると、感覚の違いに気づかされることでしょう。大きく違うのは、視界です。白バイ隊員は業務上、広範囲を見渡せる視野の確保が必要になってきます。 交通パトロールや取締り等を通して、悪質な違反を見逃さないためにも、常に目を光らせておく必要があるのです。かぶってみるとわかりますが、フルフェイスだとかなり視界が制限されてしまいます。 また、白バイ隊員の業務には、駅伝やマラソンの先導をしたり、皇族や外国からの要人等の身辺警護で先導したり、交通安全運動等のイベントを行うこともあります。そういった際に、フルフェイスで口元まで覆われていると威圧感を与えてしまいます。そのため、表情がきちんと見えるジェットが適しているわけです。 もうひとつの理由として、白バイ乗車時は必ず、無線機を装着しています。無線機はヘルメットに取り付けてあり、耳で聞くだけでなく、当然発信もします。フルフェイスだと、声が通りにくいうえに話すことさえ困難です。 これらが、白バイ隊員がジェットヘルメットを採用している大きな理由となっています。個人的にも身体への負担を考えたら、ジェットの方が長時間の装着でも疲れにくいと感じています。 ヘルメットにはいろんなタイプがあり、かぶってさえいれば交通違反にはあたらず、検挙されることはありません。用途や状況に応じて選択していいとはいえ、やはり一番に考えたいのは安全性ですね。 むき出しになっている部分が多いほど、転倒したときの損傷は大きく、死亡率も高くなります。今後、ヘルメットを購入する予定がある方は、そういったことをふまえて、選択していただきたいなと思います。
────────── ●文:ヤングマシン編集部(宅島奈津子/元白バイ警官ライター/親子関係改善コンサルタント) ※本記事の文責は当該執筆者(もしくはメディア)に属します。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
ヤングマシン編集部