「もしかして腎不全かも…」尿の回数と量にあらわれる「危険な兆候」とは?【専門医が解説】
健康診断などで肝臓の数値は気になるが、腎臓の状態についてはさほど気にかけていないという人は多いのではないだろうか。中高年が特に気をつけるべき腎臓の病気とその予防法について、専門医に話を聞いた。(取材・文/日本文章表現協会代表理事 西田延弘) 【この記事の画像を見る】 ● 中高年がかかりやすい腎臓の病気 腎臓には血液をろ過し、体の中にたまった老廃物や水分、取りすぎた塩分などを尿として体外に排出し、体液を一定に保つ役割がある。腎臓の皮質には細い血管が糸くずのようになった塊があり、ここでタンパク質より小さな分子の物質はろ過され、水分とともに尿として尿細管という細い管に漏れ出ていく。 中高年がかかりやすい腎臓の病気には、本来なら分子が大きくて尿細管には漏れ出ないタンパクが尿にたくさん出てしまう「ネフローゼ症候群」、尿中にカルシウムが結晶化して結石となる「腎臓結石」、血液をろ過する糸球体の網の目が詰まってしまって機能が低下する「腎不全」などがある。 腎臓病や透析医療が専門の橋本クリニックの櫻井健治院長によると、ネフローゼ症候群は糖尿病、ウイルス感染、腎炎などによってあらゆる年齢で発症し、食生活を含めた日常生活の不健康な習慣や尿路の感染などによって起こるとのこと。塩分制限や利尿剤などによってむくみをコントロールし、ステロイド薬や免疫抑制薬によって治療が行われる。 腎臓結石は男性では40代、女性では閉経後の50~70歳代で発症することが多いという。腎臓結石に対しては、1日2L以上の水分摂取や適度な運動などによって尿量を多めに保ち、結石を作らせないようにしたり結石が小さいうちに排出させたりする療法が用いられる。結石が大きい場合には、手術が必要だ。
● 腎不全の早期に起こる「尿の異常」とは? 「中高年で特に気をつけたいのは腎不全です。腎不全に至る最も多い原因は糖尿病の合併症である糖尿病性腎症です。人工透析を受けることになった人のうち、この糖尿病性腎症が原因の人の割合は約4割を占めています」 糖尿病のうちI型は免疫異常などが原因の先天性のものだが、II型は食べ過ぎや運動不足などの生活習慣の悪化などによって摂取エネルギー量が過多となり、インスリンの分泌量が間に合わないことによって起こるものだ。 そのほか、腎不全になる原因としては、腎硬化症という動脈硬化によるものもある。腎臓へと流れる動脈が硬化すると発生するもので、これも生活習慣の悪化が主な原因だ。 腎不全は、血液をろ過する糸球体の網の目が詰まってしまい、十分に機能しなくなった状態のことをいう。 腎不全の早期には、頻尿になる(1日10回以上トイレに行く)、量が見た目でわかるほど多くなる、褐色になるといった尿の異常のほかにも、貧血やむくみ、動悸、息切れ、発熱などの症状、および尿量の減少が腎不全の進行とともにあらわれる。 回数や量については個人差もあるので「いつもと違う」と異変を感じたら受診しよう。