「やる気が萎えた」全国のヘルパーが激怒、訪問介護の基本報酬がまさかの引き下げ 国の方針のウラに隠れた「ある変化」とは
▽厚労省と関係が近い団体も抗議 「4月の報酬改定では、訪問介護は引き上げだろう」。多くの関係者がそう思っていた。 ところが、1月下旬に厚労省が発表した改定方針で、訪問介護の基本報酬は2%強引き下げられた。他のサービスはほとんどが引き上げだった。 「まさか」「あり得ない」。介護事業所やヘルパー、利用者らでつくる市民団体が抗議の声を上げると、1週間ほどで全国の約360団体、約2500人から賛同が集まった。 団体の世話人で、埼玉県で訪問介護などを運営するNPO法人の代表理事、小島美里さんは抗議声明の発表記者会見でこう話した。 「意欲を持って働いている日本中のヘルパーの気持ちを萎えさせた。これは在宅介護の終わりの始まりだ」 日本ホームヘルパー協会と全国社会福祉協議会(全社協)も抗議の声明を発表した。「今回の改定は、国が目指す『住み慣れた地域で安心して生活を続けられる』という姿とは全く正反対」と指摘。「私たちの誇りを傷つけ、さらなる人材不足を招く。断じて許されない」と訴えている。全社協は厚労省と近い関係にあり、ここまで強い調子で批判するのは異例だ。
▽賃上げ加算あっても相殺でマイナスのケースも 厚労省が訪問介護の基本報酬を引き下げるのはなぜなのか。根拠としているのが、2022年度の経営実態の調査で訪問介護が他のサービスに比べて利益率が高かったことだ。例えば、特別養護老人ホームが1.0%の赤字だったのに対し、訪問介護は7.8%の黒字。全サービスの平均値(2.4%黒字)も大幅に上回っていた。 もう一つ、厚労省が強調するのが介護職の賃上げに向けた「処遇改善加算」の改正だ。厚労省幹部はこう説明する。 「確かに訪問介護の基本報酬は下げるが、処遇改善加算は最高24.5%と他サービスよりも高く設定した。加算を取れば、多くの事業所の収支はプラスになる。基本報酬だけでなく、トータルで見てほしい」 ただ、加算が基本報酬の引き下げで相殺され、収支にマイナスの影響が出る事業所もありそうだ。東京都内で訪問介護などを運営するNPO法人の柳本文貴代表は、収支が悪化する場合があると試算する。