「やる気が萎えた」全国のヘルパーが激怒、訪問介護の基本報酬がまさかの引き下げ 国の方針のウラに隠れた「ある変化」とは
例えば、ヘルパーが入浴や排せつなどを手伝う「身体介護」について柳本さんが試算した結果、現行制度で一番高い処遇改善加算を取得している場合は、新たに最高の加算を取っても、30分~1時間のサービスの報酬が30円ほど減る。 これまで手間がかかって利益が薄くても、利用者を引き受けてきたという柳本さん。職員の賃上げにも力を入れてきた。「事業所としては年間で100万円近い減収になる。努力が正当に評価されていない」と憤る。 前出の小島さんが指摘するのは、加算の取りにくさだ。「手続きが煩雑で、小規模事業所はとても対応できない」 これに対し厚労省は「事務を簡素化し、取得できるよう事業所を伴走型で支援していく」と理解を求めている。 ▽高齢者住宅に併設のタイプが利益率押し上げか 基本報酬引き下げの根拠とされた「訪問介護は大幅黒字」という厚労省の調査結果にも、疑問が投げかけられている。 ヘルパーが自転車や車に乗って、高齢者宅を一軒一軒回る―。そんな従来の訪問介護の形が変わってきていることが背景にある。
どういうことか。要因として、ここ10年ほどで急激に増えた「サービス付き高齢者向け住宅」と「住宅型有料老人ホーム」の存在がある。入居者は合計で約60万人に達する。 「サービス付き」「老人ホーム」という言葉から誤解されることが多いが、この二つはあくまで「住宅」で、介護サービスは備わっていない。 そこで、形式上は「外部のサービス」として、自社やグループ会社が運営する訪問介護事業所を併設するケースが多い。 こうした併設型では、ヘルパーは同じ建物の入居者を巡回すればいいので、移動時間はほぼゼロ。効率的に報酬を取得できる。現在、訪問介護事業所の4分の1以上は併設型とみられる。 併設型では、入居者に必要以上にサービスを使わせる「介護漬け」や、自社サービスに誘導する「囲い込み」といった弊害が指摘されてきた。厚労省は対策として、報酬を減算する仕組みを設けているが、「併設型が訪問介護全体の利益率を押し上げていて、従来型と一緒に扱うのは無理がある」との声が出ている。