『虎に翼』花岡(岩田剛典)の魅力を今こそ語りたい。“いけすかない若造”で“真面目で優しく不器用がすぎる”人間らしさが好きだった!
しかし、信念を貫き通した結果、悲しすぎる死を迎えてしまいました。「判事がヤミを拒み栄養失調で死亡」という新聞記事に、花岡の顔写真が載っているのを見たときは衝撃を受けたし、どこにもぶつけられない悔しさ、もどかしさを感じて苦しくなりましたが、轟が言うように真面目で優しくて不器用がすぎる花岡らしい生涯の閉じ方だったのかもしれません。 胸キュンシーンが多かったわけではないけれど、わたしたちの心のなかにじんわりと残り続ける“キュン”を与えてくれていた花岡。個人的には、第49話で寅子と再会をしたときの花岡がいちばん好きでした。いま思えば、あれが生きてる花岡の最後の登場シーンだったんですよね。 とくに好きだったのは、寅子が「(みんなが自分のことを)大人になったとか、謙虚だとか言うんです」と言ったとき、ケホケホと咳き込み「謙虚!?」と驚いていた姿。この瞬間、花岡は寅子の負けん気が強いところに惚れ込んでいたんだなぁと思ってキュンとしました。 序盤は、「女は優しくするとつけあがる」なんて言っていたのに! そういうこと言う人って、能力がある女性を遠ざけそうなのに! 寅子と付き合ったら絶対に振り回されると分かりながら、飛び込もうとしていたなんて……。 「またこうやってばったり会ったら、一緒にお昼ごはん食べましょう」 寅子の誘いに「そうだな」と笑ってくれた花岡は、もうこの世にはいません。だけど、寅子はこの約束をずっと心のなかにしまって、大事に大事に生きていくんだと思います。 寅子と花岡の恋は、始まってもいないから、終わらせることもできませんでした。ただ、もしも一緒になっていたとしても、きっと上手くはいっていない。お互いにそれが分かっているからこそ、“if”がない素敵な関係性でいられたんですよね。 ムカっとしたり、ホロっときたり、キュンとしたり。およそ2ヵ月半、わたしたち視聴者にさまざまな感情を与えてくれた花岡。しばらくはロスが続きそうですが……。彼は、自分の信念を大事に一生を全うしたわけだから、メソメソせずに見送りたいです。花岡、本当にありがとう! さよーならまたいつか!
菜本 かな
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