腕に宿る小さな宇宙 シチズン時計の「カンパノラ」コスモサインの魅力
天文表示時計とは、太陽や月、星座、惑星の位置を示すための装置や文字板をそなえた時計のこと。そもそも時計とは宇宙の運行を時間に変換して可視化するものだから、時計の起源ともいえるだろう。 「昔から熱心な愛好家がいるジャンルですが、本格的な機械式の天文表示時計となると、価格や流通量、取り扱いの難しさといった点から、手に取るのは簡単ではありません。そこで日常で使用しやすい天文表示時計を開発することにしたんです」
北緯35度の全天星座を表示する精緻な星座盤
「AO4010-18M」はそんなコスモサイン コレクションの顔ともいうべきモデルだ。宇宙の表現には、シチズン時計の技術の粋を見ることができる。
「このモデルの星座盤は、北緯35度の全天星座を表示します。実視等級4.8等星以上の明るさを持つ1,027個の恒星に加え、アンドロメダ銀河やオリオン大星雲など166個の星雲・星団も正確にレイアウトしています。この星座盤が時刻に合わせて時計と逆回りに回転することで、星の位置をリアルタイムで正確に表示します」
「北緯35度」という点もCAMPANOLAならではの特徴だ。 「海外製の天文表示時計は、その国の緯度に設定されていますから、星の位置も日本とは異なります。そこでこのモデルでは日本列島のほぼ中心の緯度に設定しました。この点も時計愛好家の方々に評価していただいています」
幅5cmに満たないケースの中に収まる小さな星座盤に、これだけの情報量を盛り込むのは、極めて高度な技術が要求される。
「もっとも難度が高いのは星座盤の製作工程です。星座盤は色ごとに異なる版を重ねて印刷したもので、このモデルの場合は、14回にわたって印刷を繰り返す必要があります。そのうちの一度、ほんのわずかでも誤差が発生したら、すべてやり直しです。印刷はもちろん、版の保管から、機器のメンテナンスまで、すべての工程を熟練の技術者が完璧に行う必要があります」 組み立ては長野県飯田市にある南信州高級時計工房が手がける。この工程に携わることができるのは時計組立マイスターと呼ばれる技術者のみ。熟練した技術を持つ彼らが、ホコリや塵が徹底的に排除されたクリーンな空間で、小さな部品の一つひとつを手作業で組み上げていく。