「肺に先天性障害」の中学生、弟と実現した修学旅行 「俺だってスプラッシュマウンテンに乗りたいよ」
「ディズニーランドは広いから、今日はこれに乗って移動しようぜ。ほら、ここに酸素ボンベも入れられるんだぜ」 文哉はそう言いながら、背中のポケットにボンベをセットした。 「ありがとう」 突然のことに、貴明はそれしか言えなかった。 車椅子は友達が代わる代わる押してくれた。おかげで、貴明は体調を崩すことなく過ごすことができた。念願だったスプラッシュマウンテンにも乗ることができ、兄弟仲良く写真に写ることができたようだ。
「ここまでお話ししてきた、吉田貴明君と文哉君のエピソードは、10年ほど前の出来事です。弟の文哉君は、成人して元気に暮らしているようですが、兄の貴明君は、二十歳になる前に亡くなったと聞きました。中学校の修学旅行は、最高の思い出になったに違いありません」(馬場看護師) 旅人たちの思い出作りを支えるため、ツアーナースの仕事は続く。
末並 俊司 :ライター