「まさに天国から地獄」投票用紙に「!」と書いてさえいなければ…わずか1票差で当選が無効 納得いかない市議会議員の法廷闘争
次にこれが「他事記載に当たるかどうか」を検討。ここで小山市と栃木県の見解は真っ二つに割れた。栃木県選管は「文字の大きさや連続性から、書き損じや訂正、無意識的な記載とは認められない」と判断して他事記載に当たると結論付けた。 片山氏はこの点についてどう反論しているか。訴状によると、こんな主張をしている。 「(片山氏は)障害者福祉に力を入れており、支援者には障害者も少なくない。そのため、この投票用紙は、字を書くのがやっとという支援者が投票所に行き、『てるみ』と書いたものの、鉛筆が引っかかって線や点が残った可能性がある」 一連の判断について、選挙管理委員会の担当者に詳しい解説を求めると、こんな答えが返ってきた。 「裁判の当事者になっているので、裁決書に書かれたこと以上の説明はできない。しかし、難しい判断で、あとは裁判所がどう考えるかだ」。苦渋の選択だったことをにじませている。 ▽貴重な1票、無駄にしないように
東京高裁は、この問題をどう考えるのか。片山氏の代理人、山中真人弁護士は、こんな最高裁判例を挙げて説明した。 争われたのは「タツミ。サブロウ」のように氏と名の間に句点があったり、「平野(善)」のように括弧が付けられたりしたものだったが、最高裁はいずれも「有効」と認定した。一見判読不能な文字でも、字の特徴から何とか判読を試みたケースもあったという。 昨年12月、提訴後に東京都内で記者会見した山中弁護士は強調している。 「裁判所は極力、他事記載の範囲を狭く解して、投票意思に沿った判断をしようというのが明らかだ」 同席した片山氏も、市議会議員としての活動を継続することに意欲を示し、「市民の思いをつなげていきたい」と語った。 記者の個人的な感覚では、投票者の意思は明らかなのに、符号や線が加えられているだけで無効になるのは納得しにくいところがある。ただ、ルールはルールだ。 果たして東京高裁はどのような判断を下すのだろうか。考えようによってはなんとも細かい話だが、今回はそれによって当選と落選が入れ替わった。政治家にとってはまさに「天国と地獄」。これから始まる審理に注目が集まりそうだ。