船井電機破産、不可解な資金の流れ 出版社が買収後3年半、347億円の現預金ほぼ枯渇
「世界のFUNAI」と呼ばれ、海外でも高い知名度を誇った電機メーカー、船井電機(大阪府大東市)が10月24日、東京地裁から破産手続きの開始決定を受けた。給料日の前日に従業員約500人全員が一斉に解雇されるという事態に日本中に驚きが広がった。2021年に出版会社に買収されて以降、約300億円の資金が流出していたとみられ、破産へと至る経緯を巡り謎が深まっている。 【図で解説】3年半の間に一体何が…船井電機を巡る資金の流れ 「20年以上勤めた船井のブランドがなくなってしまうことがショック。経営陣は社員に真実を話す責任がある」 ハローワーク門真が11日に開催した、船井電機元従業員の再就職を支援する説明会に参加した男性(46)はそう訴えた。突然解雇された元従業員を雇用しようと多くの企業が手を挙げ、約800社、約2千件の求人をまとめた冊子が訪れた人に手渡された。 船井電機の破産は、60年以上の歴史を持つ老舗メーカーとしては異例の幕切れだった。10月24日午後、本社で集められた約500人の従業員に弁護士から会社の破産と一斉解雇が通達された。 船井電機のような規模の会社が民事再生法や会社更生法によって事業再建を図らず、取締役会などの決議を経ない準自己破産の手続きをとるのはきわめて珍しい。帝国データバンクの担当者は「企業のノウハウも人材も散逸してしまう。大企業でこのようなケースは見たことがない」と驚きを隠さない。 破産申立書などによると、船井電機の21年3月末時点の現預金残高は約347億円あった。しかし、今年10月25日に予定していた従業員への給与計1億8千万円を支払うと、運転資金は1千万円を下回るというほぼ枯渇した状態となっていた。約3年半の間に一体何があったのか。 船井電機は21年5月に出版などを手がける秀和システムホールディングス(HD)に買収され、非上場となった。テレビ事業の不振により営業赤字が常態化していた中、創業家が会社を再成長させられる経営者を探し、秀和の代表取締役の上田智一氏が選ばれた。 船井電機の社長に就任した上田氏は「事業の多角化」を掲げ、23年4月に全国で脱毛サロンを展開する「ミュゼプラチナム」を買収。しかし、約1年後の24年3月にミュゼを売却している。これ以降、不可解な事柄が浮かび上がってくる。