船井電機破産、不可解な資金の流れ 出版社が買収後3年半、347億円の現預金ほぼ枯渇
しかし、その後は中国メーカーとの価格競争の激化で経営が悪化。一時期は連結売上高4千億円に迫っていたが、近年は営業赤字が続いていた。
それでも「FUNAI」ブランドの復活を目指し、創業者の哲良氏が国内家電量販大手のヤマダ電機とテレビ事業での提携を主導。17年7月に亡くなる直前まで仕事に取り組んだ。
21年5月の秀和システムHDによる買収は、テレビ事業からの脱却を模索した結果だったが、わずか3年半で破産する事態となってしまった。(桑島浩任)
■近畿大経営学部の中村文亮准教授(M&A)「安すぎる日本企業、株価上げる努力必要」
今回のケースは、当事者でないと経営戦略の失敗か、企業の資産を吸い上げるのが目的の「吸血型M&A」か判然としないのが難しい点だろう。ただ、出版社が電機メーカーを買収する経営合理性が見えないなど気になる点はある。秀和システムに任せて本当に船井電機が再建できるかをもう少し慎重に見定める必要があったのではないか。
根本的な問題として日本の企業が安すぎることがある。船井電機には買収額を上回る約347億円の現預金があったとされている。つまり、買収すればそれだけでもうかってしまう。これでは買収側は経営を再建する必要性がない。(船井側は)株価を上げる努力をもっとしなければいけなかったし、現預金を事業の芽を育てる投資に回しておくべきだった。
また、株式についてもすべて売却してしまうのではなく、創業家がある程度保有して口を出せる状況をつくっておけばよかったのではないか。一般的にはそういうケースが多い。株式をすべて握られてしまうといざというときに何も対抗できない。船井側の脇が甘かったといえるだろう。(聞き手 桑島浩任)