「働くなら寝ていたほうが」…あまりに絶望して人生をあきらめた中国の若者がとった「驚きの行動」
ふつうに生きていたら転落するーー! あまりに残酷な「無理ゲー社会」を生き延びるための「たった一つの生存戦略」とは? 【写真】「働くなら寝ていたほうが」…絶望して人生をあきらめた中国の若者の行動 作家の橘玲氏が、ますます難易度の上がっていく人生を攻略するために「残酷な世界をハックする=裏道を行く方法」をわかりやすく解説します。 ※本記事は橘玲『裏道を行け』(講談社現代新書、2021年)から抜粋・編集したものです。
「寝そべり族」はなぜ生まれたか
「寝そべっているのはいいことだ、寝そべっているのは素晴らしい、寝そべるのは正しい、寝そべっていれば倒れることもない」 2021年6月、中国でジャン・シンミンという36歳の男性がソファに寝転び、ギターを爪弾きながら歌う動画が削除された。 それに先立つ同年4月、大手ポータルサイトの掲示板に「食事は1日2回でいいし、働くのは1年に1~2ヵ月でいい」「<寝そべり>はまさに賢者の運動。<寝そべり>だけが万物の尺度だ」とする「<寝そべり>は正義だ」という文章がアップされ、SNSを通じて急速に広がった。 彼らは「躺平族(寝そべり族)」と呼ばれる。 この風潮に対して中国国防省の報道官は、「この激動の時代に寝そべりながら成功を待つなどあり得ない。必死の努力にこそ栄光がある。若者たちよ、奮起せよ」と発破をかけた。 習近平政権による民間学習塾規制、未成年のオンラインゲームの週3時間制限、アイドル推し(ファン活動)への規制なども、出生率を上げ、中国共産党を支持する「健全」な若者を育て、活気ある社会を維持することが目的とされている。
人生は「攻略不可能な理不尽なゲーム」
中国で「寝そべり族」が増殖する背景には、1990年代から30年にわたって続いた高度経済成長が市場の成熟とともに減速し、「頑張って働けば報われる」という親世代のような夢を若者たちがもてなくなったことがある。 21世紀に入ると、日本の「草食系」や韓国の「ヘル(地獄のような)朝鮮」など、先進諸国で「自分たちは親世代よりゆたかになれない」というあきらめが拡がった。それがいよいよ中国にまで波及したのだ。 これらの若者たちに共通するのは、人生は「攻略不可能な理不尽なゲーム」という感覚だ。 無理ゲーに対処するもっともシンプルな方法はゲームに参加しないことで、それが「寝そべり主義」だが、なにもしないままではどんどん社会の底辺に押しやられてしまう。 それに対してアメリカの「ミレニアル世代(1980~95年生まれ)」のあいだでは、より現実的な2つの人生戦略が広まっている。それが「ミニマリズム」と「FIRE」だ。 さらに連載記事<「トランプ再選」に落胆する「リベラル」がまったく理解していない、世界中で生きづらさを抱える人が急増した「驚きの原因」>では、人生の難易度が格段に上がった「無理ゲー社会」の実態をさらに解説しています。ぜひご覧ください。
橘 玲(作家)