2019年「ノーベル賞」受賞を期待する研究は? 日本科学未来館が選出
現在の科学に合わなくなった? ノーベル賞
毎年のように書いているが、120年に近い歴史を持つノーベル賞は、そろそろ現在の科学の実態に合わなくなってきているように思う。分野の境目があいまいだというのももちろんだが、コンピューターの理論・設計などを研究する「計算機科学」がどの科学分野にも入り始めており、これが対象外であるということは、そろそろ無理が生じているように思う。アルフレッド・ノーベルが遺言書でノーベル賞を定めたとき、コンピューターはまだなかった。ただ「人類のために貢献した」研究者にノーベル賞を贈るというその精神を考えれば、見直しがあっても良いように思う。 さらに「存命者3人」という“お約束”も、そろそろ限界に来ているように思える。科学には今でも1人の研究者のひらめきから始まるものもあるが、ときには数千人規模の研究チームがかかわった成果もある。国際ヒトゲノム計画や大型装置を使った国際チームによるニュートリノの発見や重力波の検出などがそれだ。ノーベル賞でも平和賞は、国際赤十字・赤新月社連盟や国境なき医師団などの団体に贈られたことがある。自然科学3賞も、団体での受賞を考えても良いのではないだろうか。
◎日本科学未来館 科学コミュニケーション専門主任 詫摩雅子(たくま・まさこ) 1964年、東京生まれ。日本経済新聞科学技術部、日経サイエンス編集部を経て、2011年より日本科学未来館。