2019年「ノーベル賞」受賞を期待する研究は? 日本科学未来館が選出
■化学賞(10月9日午後6時45分~)
《第1位》リチウムイオン電池の開発 ・ジョン・グッドイナフ(John B. Goodenough、米国)/水島公一(みずしま・こういち、日本)/吉野彰(よしの・あきら、日本) 充電しながら繰り返し使えるリチウムイオン電池を開発。リチウムは水素、ヘリウムに次いで3番目に軽い元素として知られる。それまでの充電可能な電池に比べて電圧が高く、重さも軽く、サイズも小さくすることができ、さらに長寿命という優れた性質がある。携帯電話が小型化し、タブレットのような機器が登場したのも、この電池の発明によるところが大きいといえるだろう。 《第2位》酸化チタンの光触媒作用の開発 ・藤嶋昭(ふじしま・あきら、日本) 酸化チタンに光が当たると、光エネルギーによって水が水素と酸素に分解される「本多-藤嶋効果」の発見。さらには汚れも分解でき、殺菌や消臭効果もある。掃除の大変なビルやトンネルの外壁の汚れ防止など、生活のさまざまなところですでに使われている。 《第3位》「次世代シーケンサー」の開発 ・ジョナサン・ロスバーグ(Jonathan M. Rothberg、米国) DNAを自動で高速に安く解読できる次世代シーケンサーを開発。基礎研究から医療の現場まで幅広く使われている。 化学賞は予想が難しい。科学において、化学と物理学、化学と生理学・医学の境目など元々なかっただろう。生理学・医学賞のところでも触れた2015年の「DNA修復の仕組みの研究」のときには、未来館では化学賞チームよりも生理学・医学チームの方が研究中身になじみがあったことを思い出す。2002年の田中耕一先生や、2008年の下村脩先生が受賞したときも「生理学・医学ではないんだ」と感じた。同様に、2014年の物理学賞を受賞した青色発光ダイオードの研究は、未来館では化学賞チームが名前を挙げていた。 今回のリチウムイオン電池も化学賞だろうと思うが、この話を紹介しようとすると電子の移動の話になり、物理学でもいいと思えてくる。そういう意味では、2位の光触媒は「これは化学」といえる話題だろう。3位の次世代シーケンサーは、使われている分野が生命科学なので「化学なのか?」と思う人もいるだろう。分子としてのDNAを扱っているので化学賞とした。