2019年「ノーベル賞」受賞を期待する研究は? 日本科学未来館が選出
■物理学賞(10月8日午後6時45分~)
《第1位》「光格子時計」の提唱と実現 ・香取秀俊(かとり・ひでとし、日本) 300億年かかっても1秒しかズレの生じない光格子時計を考案し、実現したのが香取博士。ここまで正確に時間を測れるようになると、アインシュタインの相対性理論から導かれる重力による時空間の歪みまで検出でき、たとえば地下に埋まっている貴金属の影響でその場所だけ重力がわずかに大きくなっていることなどを知れるセンサーとしても使えると期待されている。 《第2位》カーボンナノチューブの発見と応用 ・飯島澄男(いいじま・すみお、日本)/遠藤守信(えんどう・もりのぶ、日本)/フェードン・アヴォーリス(Phaedon Avouris、ギリシャ)/シース・デッカー(Cees Dekker、独) カーボンナノチューブは炭素でできた細い管。軽くて丈夫な上に、電気的にもユニークな性質をもった素材だ。これを発見したのが飯島博士、大量合成法を開発したのが遠藤博士、電子部品としての応用方法を開発したのがアヴォーリス博士とデッカー博士だ。 《第3位》量子テレポーテーションの研究 ・チャールズ・ベネット(Charles H. Bennett、米国)/ジル・ブラッサー(Gilles Brassard、カナダ)/ウィリアム・ウーターズ(William K. Wootters、米国)/古澤明(ふるさわ・あきら、日本) ベネット、ブラッサー、ウーターズの3氏が、量子の奇妙な性質を使い、情報を瞬時に伝える方法を考案。実験でその実現可能性を示したのが古澤博士。 団体が受賞することのある平和賞を別とすれば、過去のノーベル賞の受賞者はこれまでずっと各賞3人までだった。上の研究テーマでは、3人に絞れなかった、あるいは4人目をどうしても紹介したいという科学コミュニケーターたちの思いがある(過去にもすでに故人になられていた外村彰先生や戸塚洋二先生の名前を受賞予想記事で挙げたことがある)。受賞者を「当てる」のが目的ではなく、ノーベル賞にふさわしい研究を紹介するのが、活動の趣旨であるのでご容赦願いたい。 物理学賞は「物性」「宇宙」「素粒子」ジャンルが順番に受賞しているといわれている。その流れからすると、今年は宇宙で、系外惑星の発見、つまり太陽とは別の星のまわりを回っている惑星の発見が有力視されている。受賞するとしたら、スイスのミシェル・マイヨール氏と彼の学生だったディディエ・ケロー氏の師弟コンビだろう(科学コミュニケーターの投票では4位に入っていた)。今年は宇宙と思いながらも、上位3つがいずれも宇宙以外なのは、これも「当てる」のが目的ではないからだ。